説明

運動障害の治療方法

本発明は、有効量の式(I)の化合物を、それを必要としている患者に投与することによって、運動障害を治療する方法に向けられている。更に特定すれば、本発明は、患者に対して式(I)の化合物を投与することを含むミオクローヌスを治療する方法であって、前記ミオクローヌスがアルコール反応性の本態性ミオクローヌスではない方法に向けられている。幾つかの実施形態において、ミオクローヌスは低酸素症後ミオクローヌスである。本発明はまた、式(I)の化合物を患者に投与することを含む、ジストニア、本態性震顫、小脳震顫、チック、又は舞踏病を治療する方法に向けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願及び発明の分野)
この出願は、2004年11月10日出願の米国仮特許出願第60/626,645号の優先権を主張するものであり、その全体を本明細書の一部として援用する
【0002】
ここに引用する全ての特許、特許出願、及び刊行物の全体を、本明細書の一部として本願に援用する。これら刊行物の開示は、その全体を、本発明がここに記載する発明の日における当業者に既知の技術の状態をより完全に記載するために、本明細書の一部として本願に援用する。
【0003】
この特許の開示には、著作権の保護を受ける題材が含まれている。この著作権の所有者は、それが米国特許商標庁の特許ファイル又は記録の中に現れるときに、その特許書類又は特許の開示の何人かによるファクシミリ複製に対して異論を有するものではないが、そうでない場合には、何れか又は全ての著作権を留保するものである。
【0004】
この発明は、多動性運動障害、チック、及び舞踏病のような運動障害の治療方法に関する。より詳細に言えば、本発明は、ここで定義する式(I)の化合物を投与することによる、ミオクローヌス、ジストニア、及び本態性震顫の治療に関する。このような化合物には、γ−ヒドロキシ酪酸ナトリウム(Xyrem(登録商標))が含まれる。
【背景技術】
【0005】
運動障害は、運動制御及び筋緊張に影響する広範な神経学的状態を包含するものである。これらの状態は、一定の身体動作を制御できないという特徴を示す。従って、これらの状態は、患者にとって顕著なクオリティー・オブ・ライフの問題を提示する。運動障害の非限定的な例には、パーキンソン氏症候群、ジスキネジア(運動異常症)、ジストニア(筋緊張異常)、ミオクローヌス(間代性筋痙攣)、舞踏病 、チック、及び震顫が含まれる。
【0006】
運動障害の一つの型であるジストニアは、持続性の不随意性運動を特徴とする神経学的障害である。これらの運動は、典型的には捩れ姿勢を生じる。ジストニアはまた、捩れジストニアとしても知られている。遺伝的原因、毒素又は薬物誘導性の原因、及びジストニアを呈する変性病を含む多くの状態が、ジストニアを生じる。
【0007】
本態性震顫は、ジストニアとは別のもう一つの型の運動障害である。それは、成人集団における震顫の最も共通した原因であり、概ね5百万人から1千万人のアメリカ人に影響を与えている。本態性震顫の患者は、身体部分の不随意な律動的震え、又は揺動を示す。本態性震顫は、普通は手、頭、又は声に影響するが、舌、脚部、又は体幹にも影響し得る。一つの身体部分の震顫は、単独で、又は他の身体部分と共に生じる可能性がある。その重篤度に応じて、本態性震顫は単なる僅かな混乱から、機能的不能及び身体的ハンディキャップへとエスカレートする。特に、仕事が繊細な運動制御を含む場合、本態性震顫の患者は、これらの技能を実行するのが困難になるかもしれない。例えば、手の重度の震顫は、食べること、飲むこと、書くこと、及び更衣することを困難にする。本態性震顫に付随する震えは、典型的には経時的に悪化する。本態性震顫の正確な原因は知られていないが、遺伝することが多い。
【0008】
ミオクローヌスは、短い突然の筋肉収縮(正のミオクローヌス)又は弛緩(負のミオクローヌス)によって生じる非常に迅速な電撃様の攣縮を特徴とした、更にもう一つの運動障害である。ミオクローヌスのショック様不随意運動は、日常生活の基本的活動を妨げるのに充分に重篤であることが多い。これらの攣縮は、身体の如何なる部分をも冒す可能性がある。幾つかのミオクローヌス運動は刺激に応答して生じるのに対して、他の運動は運動をするときに生じる。更に他のミオクローヌス運動は自然に生じる。ミオクローヌスは、中枢神経系に影響を与える幾つかの条件の結果として生じ、遺伝的障害(例えば本態性ミオクローヌス)、薬物及び毒素に誘導された状態、心停止の後(低酸素症後ミオクローヌス)、及び進行性の神経学的変性障害(例えば多発性硬化症、アルツハイマー病、又はクロイッツェルフェルト・ヤコブ病)の結果としてのものが含まれる。例えば、ジストニアを伴ったミオクローヌスは、本態性ミオクローヌスとしても知られており、稀な遺伝的形態のミオクローヌスである。ジストニアを伴ったミオクローヌスの副分類、即ち、ジストニアを伴ったアルコール反応性ミオクローヌスは、全ての他の治療に対して完全に抵抗性であり、アルコールに対して鋭敏に反応する。
【0009】
もう一つのタイプのミオクローヌス、即ち、低酸素後ミオクローヌスは、心臓もしくは肺停止の後、又は腎不全もしくは肝不全の後のように、脳への酸素欠乏事象に続いて生じる、屡々荒廃的で且つ稀な神経学的障害である。このような外傷を生き抜いた幾人かの患者は、正常な精神機能を有するが、重度の不随意運動を発症する。筋肉作業を実行しようとしたり、又は歩こうとする試みは、典型的に、難治性で意図的なミオクローヌスをトリガーする。負のミオクローヌス攣縮は姿勢を支持する筋肉を冒すことが多く、これは椅子から飛跳ねる歩行を生じるので、患者を車椅子に束縛することになる。皮質及び皮質下の両方の病巣が、ミオクローン攣縮を生じる原因になり得る。陽電子放出トモグラフィーを用いた最近の研究では、低酸素症後の患者において、対照には存在しない特徴的パターンでの腹外側視床の活性化が示された。低酸素症ミオクローヌスの治療は薬物投与に依存しており、これは部分的に有効であるに過ぎない。クロナゼパン、バルプロン酸、レベチルアセタム又はゾニサミドのような抗ミオクローヌス剤での治療は、ときには有用であるが、多くの患者は不完全な利益を受けるだけであり、他の患者は全体的に依存状態のまま残される
【0010】
ミオクローヌス、ジストニア、舞踏病、チック、及び本態性震顫のような運動障害は、ベンゾジアゼピン、抗痙攣剤、及びβ-アドレナリン作動性ブロッカを用いて治療される。運動障害、特にジストニアのために使用される他の治療剤には、抗コリン作動薬、及びドーパミン遮断剤又はドーパミン除去剤が含まれる。しかし、全ての患者が薬物療法に対して充分に反応する訳ではなく、幾つかの薬物は充分に耐容性でなく、該薬物は望ましくない副作用を生じ得るので、これら薬剤の効果は減殺される。加えて、幾つかの症例において、患者は当該薬物に対する耐性を発生し、症状を改善するために更に増大した投与量を必要とする。多動性運動障害を治療するためには、視床切開、淡蒼球手術及び深部脳刺激のような外科的手術も使用される。しかし、それらの侵襲的性質のために、これら治療オプションはそれほど望ましいものではない。従って、多動性運動障害のような運動障害のための、現在の治療法の欠点を提示しない代替的薬物療法に対する必要性が存在している。
【0011】
幾つかの報告が、アルコールの投与でミオクローヌスの改善を経験した、進行性ミオクローヌス性癲癇及び低酸素症後ミオクローヌスの患者を記述している。アルコールの摂取でミオクローヌスが劇的に改善する、稀な低酸素症後ミオクローヌスの患者が記述されてきた。この効果は顕著なものであり、典型的には短期的で、数時間しか持続しない。同様に、本態性震顫もまた、屡々アルコールに対して反応する。興味をそそる治療オプションではあるが、アルコールの摂取は、既に同時の抗癲癇剤投与で鎮静された患者には悪いアドバイスである。発作閾値を低下させるアルコールの能力は、発作の履歴を有する患者においても関心事である。更に、アルコールは、典型的には震顫又はミオクローヌスの軽減を生じるために必要とされる投与量で、多幸感を生じる。アルコールを用いた治療の更なる欠点には、慢性的使用での胃食道の糜爛、肝硬変の可能性を含む肝毒性のリスク増大、肥満及び糖尿病の患者では禁忌であるカロリー及び糖の摂取、心臓病の患者における健康の問題が含まれる。最後に、運動障害を治療するためのアルコールの継続使用は、アルコールを徐々になくしたときに、重篤度が増した状態の運動障害症候群が戻ってくるリバウンド効果を導く可能性がある。神経系に対する効果において、アルコールに類似した認可された医薬であるγ−ヒドロキシ酪酸ナトリウムで治療したときに、改善されたミオクローヌスを示すアルコール反応性ミオクローヌスの一人患者が最近報告された。
【0012】
従って、運動障害、特にミオクローヌス、ジストニア、舞踏病、チック、及び本態性震顫の薬物に基づく効果的な治療が必要とされている。
【発明の開示】
【0013】
本発明は、現在は治療可能でないか、又は最良の医学的療法でも不充分にしか治療さない、不随意運動障害を治療する方法を提供する。本発明は、運動障害を治療するための治療方法であって、次式(I)の化合物を投与すること含んでなる方法を提供する:
【化1】

ここで、
nは、1〜2であり、Xは、H、医薬的に許容可能な陽イオン、又は(C1〜C4)アルキルであり、Yは、ヒドロキシ、(C1〜C4)アルコキシ、CH(Z)CH3、(C1−C4)アルカノイルオキシ、フェニルアセトキシ、又はベンゾイルオキシであるか、 或いは、X及びYが単結合で結合されるときは、Zは、ヒドロキシ、(C1−C4)アルコキシ、(C1〜C4)アルカノイルオキシ、フェニルアセトキシ、又はベンゾイルオキシである。
【0014】
一つの実施形態において、運動障害は、ミオクローヌスのような多動性運動障害である。もう一つの実施形態において、ミオクローヌスは、ジストニアを伴ったアルコール反応性ミオクローヌスではない。更なる実施形態において、ミオクローヌスは低酸素症後ミオクローヌスであるか、又はアルコール反応性の低酸素症後ミオクローヌスではない。更にもう一つの実施形態において、当該運動障害は本態性震顫である。式(I)の1以上の化合物の前記量は、ミオクローヌス又は本態性震顫の少なくとも一つの症候群を除去又は緩和するために有効である。このような症候群には、負のミオクローヌス、安静時ミオクローヌス、刺激感受性ミオクローヌス、動作ミオクローヌス、良性震顫、姿勢震顫及び動的震顫が含まれるが、これらに限定されない。
【0015】
本発明はまた、多動性運動障害を治療する方法であって、ミオクローヌスに罹患したヒトに対して有効量の式(I)の化合物を投与することを含み、前記有効量は、ミオクローヌスの少なくとも一つの症候群を緩和するのに有効であり、前記ミオクローヌスは、ジストニアを伴ったアルコール感受性ミオクローヌスではない方法を提供する。ミオクローヌスの非限定的な例には、口蓋ミオクローヌス、驚愕症候群、及び脊髄ミオクローヌスが含まれる。
【0016】
本発明は更に、多動性運動障害を治療するための治療方法であって、ジストニア、本態性震顫、小脳震顫、チック、舞踏病(例えば、ハンチントン病)、舞踏病、バリスムス、進行性ミオクローヌス性癲癇、局所性の仕事特異的ジストニア、及び脳幹ミオクローヌスに罹患したヒトに対して、有効量の式(I)の化合物を投与することを含み、前記量は、前記ミオクローヌスの少なくとも一つの症候群を緩和するのに効果的であり、前記ミオクローヌスは、ジストニアを伴ったアルコール感受性の本態性ミオクローヌスではない方法を提供する。ジストニアの非限定的な例には、全身性ジストニア及び限局性ジストニアが含まれる。
【0017】
式(I)の好ましい化合物には、4−ヒドロキシ酪酸(n=2)のアルカリ金属塩、例えば4-ヒドロキシブタン酸一ナトリウム塩(GHB)、γ-ブチロラクトン、及び4−アセトキシブタン酸又は4−ベンゾイルオキシブタン酸の(C1〜C2)アルキルエステルが含まれる。本発明に使用できる他の化合物には、Kluger(米国特許第4,599,355号及び同第4,738,985)に開示されたものが含まれる。γ−ヒドロキシブタン酸の他のプロドラッグもまた有用であり、これには1,4−ブタンジオール、4−ヒドロキシ吉草酸、γ−バレロアセトン、トランス−4−ヒドロキシクロトン酸、4−メチル−4−ヒドロキシクロトン酸、及びトランス−4−フェニル−1−ヒドロキシクロトン酸、及びそれらの塩が含まれる。本発明が想定しているγ−ヒドロキシブタン酸の更なる類似体については、文献(J.J. Bourguignon, et al., J. Med. Chem. 31(5):893-897 (May 1988))を参照されたい。
【0018】
本発明の一つの実施形態において、ナトリウムオキシベート(sodium oxybate;XyremR)での患者の治療は、運動障害、特にミオクローヌス、ジストニア、舞踏病、チック、及び本態性震顫の症状を緩和する。特に、全ての入手可能な抗ミオクローヌス剤に対して反応しない重度の低酸素症後ミオクローヌスの患者において、この効果が観察された。
【0019】
(発明の詳細な説明)
ここで言及する特許文献及び科学文献は、当業者が入手可能な知識を確立するものである。ここで引用する発行された特許、出願、及び他の刊行物は、各々の特定的かつ個別的な援用が明示されたのと同じ範囲で、本明細書の一部として本願に援用される。
次の刊行物は、それらの全体が本明細書の一部として援用される:米国特許第5,990,162号、同第6,472,431号、及び同第6,780,889号、並びに米国特許公開2004/0092455。
【0020】
(定義)
本発明の目的のために、以下の定義が使用されるであろう。
「キャリア」の用語は、ここでは、薬理学的に活性な物質のための医薬的に許容可能な担体を意味する。該キャリアは、前記活性物質の機能を終わらせることなく、前記物質の標的部位への送達を容易にする。キャリアの適切な非限定的例には、局所投与に適した溶液、クリーム、ゲル、ゲル乳剤、ゼリー、ペースト、ローション、膏薬、スプレー、軟膏、粉末、固体混合物、エアロゾル、エマルジョン(例えば油中水、又は水中油)、ゲル水溶液、水溶液、懸濁液、リニメント剤、チンキ、及びパッチが含まれる。
【0021】
「医薬的に許容可能な」の用語は、ここでは、哺乳類での使用に適することを意味するために使用される。特に、化合物の医薬的に許容可能な塩には、その酸及び塩基付加塩が含まれる。適切な酸付加塩は、無毒の塩を形成する酸から形成される。非限定的な例には、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、酸リン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酸クエン酸塩、酒石酸塩、酒石酸水素塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、糖酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホンサン塩、p−トルエンスルホンサン塩、及びパモ酸塩[即ち、1,1−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート)]が含まれる。適切な塩基塩は、無毒の塩を形成する塩基から形成される。非限定的な例には、アルミニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩及びジエタノールアンモニウム塩が含まれる。適切な塩の概説については、文献[Berge et al., J. Pharm. Sci. 66:1-19 (1977)、及びRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Ed., ed. A. Gennaro, Lippincott Williams & Wilkins, 2000]を参照されたい。
【0022】
医薬的に許容可能なエステルには、エステル結合の加水分解の際に、生物学的有効性及びカルボン酸の性質が維持され、また生物学的に又は他の点で望ましくないものではないエステルが含まれる。プロドラッグとしての医薬的に許容可能なエステルの説明については、文献[Bundgaard, E., ed., Design of Prodrugs, Elsevier Science Publishers, Amsterdam, 1985]を参照されたい。これらのエステルは、典型的には、対応するカルボン酸及びアルコールから形成される。一般的に、エステル形成は、慣用的な合成技術を介して達成することができる[例えば、March's Advanced Organic Chemistry, 3rd Ed., John Wiley& Sons, New York p. 1157, 1985及びその中に引用された参考文献、並びにMark et al., Encyclopedia of Chemical Technology, John Wiley & Sons, New York, 1980を参照のこと]。エステルのアルコール成分は、一般に、(i)任意に1以上の二重結合を含み、且つ任意に分岐した炭素を含むC2−C12脂肪族アルコール、又は(ii)C2−C12芳香族もしくはヘテロ芳香族のアルコールを含むであろう。本発明はまた、ここに記載したエステルであり、また同時にその医薬的に許容可能な塩の両方である組成物の使用を想定している。
【0023】
ここでの「約」の用語は、概ね、ほぼ、概略で、又は凡そを意味するために使用される。「約」の用語が数字範囲と共に使用されるとき、それは設定された数値の上及び下へと境界を拡張することによって、当該範囲を変更する。一般に、ここで用いる「約」の用語は、示された値の上下に≦20%の変動で、数値を修飾するために使用される。
ここでの「有効な」の用語は、治療されている障害又は状態の望ましい治療又は改善を生じる量及び間隔で、活性物質が投与されることを示すために使用される(例えば、ミオクローヌス又は震顫の徴候の少なくとも一つを減少させるために有効な量)。
γ−ヒドロキシ酪酸(GHB)は、ヒトの神経系又は他の器官に見られる天然に存在する物質である。それは、視床下部及び基底神経節において最も高濃度で見られる。この代謝産物に対して高い親和性を持った中枢認識部位の発見は、それが、γ−アミノ酪酸代謝の偶発的な分解産物としてではなく、神経伝達物質又は神経モジュレータとして機能することを示唆する。
【0024】
GHBは、γ−アミノ酪酸(GABA)に構造的に密接に関連した短鎖脂肪酸である。哺乳類の脳における内因性神経伝達物質阻害剤であるGHBは、1〜4mmorの濃度で天然に存在する。それは他の神経伝達物質とは異なって、血液−脳関門を通過することができ、外部から投与された薬物が脳内での濃度を顕著に上昇させる[Wong C.G.T., et al., Trends in Pharmacological Sciences 25:29-34 (2004); Waszkielewicz A., et al., Pol. J. Pharmacol. 56:43-49 (2004)]。GABAはGHBの前駆体であり、シナップス神経末端において合成される。脳内には、GHBについて特異的な高親和性受容体が、海馬、皮質及び視床において最高濃度で存在する。GHBは、それ自身の受容体及びGABA−B受容体の両方において作用することができ、前者を直接刺激すると共に、GABAへの変換を受けた後に後者を間接的に刺激する。Id.
【0025】
GHBのナトリウム塩は、その不幸な不正製造及び乱用の結果として、以前にはスケジュールI物質として分類された。しかし、それはヨーロッパでは、アルコールの節制及び中止を維持するために長年に亘って合法的に使用されてきた[Moncini M., et al., Alcohol 20:285-291 (2000); Korninger C., et al., Acta Med. Austriaca 30:83-86 (2003); Addolorato G., et al., Drug Alcohol Depend 53:7-10 (1998)]。更に最近になって、γ−ヒドロキシ酪酸ナトリウムは、合衆国において、XyremR(Orphan Medical, Inc., Minnetonka, Minnesota)の名称の下でスケジュールIII物質として再分類されている。XyremRは、脱力発作を伴った睡眠発作患者に使用するために特別に認可されている。合衆国においてXyremRで治療される全ての患者は、XyremR成功プログラム、即ち、薬物が適切に使用され且つ取扱われることを保証する安全性及びモニターシステムに登録される[Fuller D.E., et al., Drug Saf. 27:293-306 (2004)]。正しく投与されたとき、該薬物は安全であり、充分に耐容性を示す[Sleep 25:42-49 (2002)]。
【0026】
XyremR(ナトリウムオキシベート;sodium oxybate)は、抗脱力発作活性を備えた中枢神経系抑制剤である。XyremRは、水に溶解させた液状形態で経口で投与される白色粉末である。それは二酸化炭素及び水に代謝され、活性な代謝産物をもたず、チトクロムP450系の活性を変化させない。睡眠発作を有する合計448人の患者が、臨床試験においてXyremRの投与を受けた。XyremRの認可された適応症である脱力発作を伴った患者については、均等にニ分割された一晩当り4.5グラムの出発投与量で薬物が与えられた。XyremRの最初の投与量は、食後数時間の就寝時に与えられ、2回目の投与は2.5〜4時間後に与えられた(患者は目覚めている)。この投与量は、1日当り1.5gの増量で8週間に亘って、最大で1日当り9グラムまで増量されてよい。
【0027】
健康なヒトボランティアにおいて、約30〜60mg/kg投与量の4−ヒドロキシ酪酸一ナトリウム塩(ナトリウムオキシベート又はGHB;Merck Index 8603)は、約2〜3時間継続するNREM及びREM睡眠の正常なシーケンスを促進する。GHB投与後の患者に観察される最も一貫した効果は、徐波睡眠(SWS)の増大である。合計の夜間REM睡眠の持続時間は、通常は変化しない。夜の合計の睡眠時間は増大するかもしれず、又は変化しないかも知れない。睡眠発作の患者は、6月に亘るGHBの睡眠作用に対して耐性を示さなかった。
【0028】
文献に記載された研究[R. Broughton and M. Mamelak, Can. J. Neur. Sci., 7:23 (1980), L. Scrima et al., Sleep, 13:479 (1990)、 及びM. B. Scharf et al., Am. Fam. Phys., 143 (July 1988)]は、睡眠発作の治療におけるGHBの効果を評価した。これら研究の結果は、GHB治療が睡眠発作の徴候及び症状(例えば、日中の眠気、脱力発作、睡眠麻痺、無呼吸、及び入眠時幻覚)を実質的に低下させることを確認している。加えて、GHBは、合計睡眠時間及びREM睡眠を増大させ、またREM潜伏を減少させる。これらの研究の結果は、睡眠発作の治療のために長期間使用したときの、GHBについての正の安全性プロファイルを示している。GHBを用いた有害実験は、発生頻度及び重篤度において最小であり、また睡眠時遊行症、遺尿症、頭痛、及び眩暈を含んでいた。
【0029】
GHB及びγ−ブチロラクトンは、アルドリッチケミカルCo社(Milwaukee, Wis.)から入手可能であり、式(I)の範囲内にある他の化合物を調製するために用いることができる。該化合物は(C1〜C4)アルカノールを用いてエステル化することができ、またアルカノイル及びベンゾイルの塩化物もしくは無水物を用いて、アルカノイル化又はベンゾイル化することができる。陽イオンは容易に交換されて、ナトリウムを他の金属又は有機陽イオン、例えばCa+、K+、Li+、又は(R)4+[ここでの各R はH、フェニル、(C1〜C6)アルキル、又はヒドロキシ(C1〜C6)アルキルである;即ち、アンモニウム塩又はヒドロキシエチルアミン塩]で置換することができる。4−ヒドロキシ酪酸及びその誘導体の調製方法については、文献[Marvel et al., J. Am. Chem. Soc., 51:260 (1929); Japanese Patent No. 63174947,及び German Patent Nos. 237310, 237308 and 237309]を参照されたい。
【0030】
GHBの抗多動性効果の機構は知られておらず、また特定の理論に束縛されることを望むものではないが、当該薬物は、ミオクローヌス運動を発生させる原因である皮質−皮質下回路の代謝トポグラフィーを変化させるように作用する可能性がある.最近の研究では、低酸素症後ミオクローヌスの患者が、腹側外側視床及び脳橋における代謝亢進の特定のパターンを有することが示された[Frucht S.J., et al., Neurology 62:1879-1881 (2004)]。視床のこの領域は、他の形態のミオクローヌスに関与することが示されており、また選択されたミオクローヌス−ジストニアの患者は視床刺激からの恩恵を受ける[Trottenberg T., et al., Mov. Disord. 16:769-771 (2001); Kupsch A., et al., J. Neurol. Neurosurg. Psychiatry 67:415-416 (1999)]。
【0031】
本発明は、式(I)の化合物を患者に投与することによって、運動障害を治療するための方法に向けられている。本発明が想定している運動障害の非制限的な例には、ミオクローヌス、ジストニア、舞踏病、チック、及び震顫(本態性震顫を含む)が含まれる。種々のタイプのミオクローヌスが、疾患の生理学(皮質、皮質下、脊髄、末梢)、臨床徴候(解剖学的分布、吸入誘発因子、収縮パターン)、及びミオクローヌス運動の原因(生理学的、本態性ミオクローヌス、ミオクローヌス性癲癇、二次ミオクローヌス)に基づいて分類される。例えば、皮質ミオクローヌスは、感覚運動皮質から生じ、それらの攣縮運動の規則的な律動を特徴とするものである。皮質下ミオクローヌスは、視床又は脳幹に対する損傷から生じる。ミオクローヌスは、限局性(特定の身体部分を冒す)、区域的(相互に近接した身体の部分を冒す)、多巣的、又は全身的であることができる。幾つかのミオクローヌス性運動は自然発症的であるのに対して、他は刺激に応答して生じる(反射性又は刺激感応性)。
【0032】
動作的又は意図的ミオクローヌスは、自発的運動又は運動を意図するに際に生じる。ミオクローヌス運動の収縮パターンは、律動性、非律動性、又は振動性であることができる。一つの実施形態において、ミオクローヌスはアルコール感受性の本態性ミオクローヌス−ジストニアではない。他の実施形態において、該ミオクローヌスは低酸素症後ミオクローヌスであるか、又はアルコール反応性低酸素症後ミオクローヌスではない。更なる実施形態において、患者は次のうちの1以上を示す:負のミオクローヌス、安静時ミオクローヌス、刺激感受性ミオクローヌス、及び動作ミオクローヌス。更なる実施形態において、当該ミオクローヌスは口蓋ミオクローヌス、驚愕症候群、脊髄ミオクローヌス、進行性ミオクローヌス性癲癇、及び脳幹ミオクローヌスである。
【0033】
震顫もまた、種々のタイプを包含するものである。動態学的又は意図的震顫は、随意運動の際に生じる。動態学的震顫の一つのタイプである姿勢震顫は、腕を延ばす等の、重力に抗して固定された位置を維持しようとするときに生じる。内部震顫は、一般的な振動感覚である。典型的には、震顫は睡眠の間は消失する。震顫は、震えの分布、それが生じる型及び仕方、強さ及び頻度、収縮パターンン、及び機能的性能の程度を決定することによって評価される。幾つかの実施形態において、患者は、高められた生理学的震顫、姿勢震顫、又は動的震顫のうちの1以上を示す。
【0034】
本発明はまた、式(I)の化合物を用いたジストニア、小脳震顫、チック、又は舞踏病の治療に向けられる。種々のタイプのジストニアが、解剖学的分布に基づいて特徴付けされる。例えば、限局性ジストニアは、身体の一つの領域に限定されるのに対して、区域的及び多巣的ジストニアは身体の二以上の領域(それぞれ、近接/連続した、及びもっと離れた)を冒す。全身性ジストニアは、身体の1以上の他の領域に加えて脚運動を含むのに対して、片側ジストニアは身体の半分を冒す。限局的ジストニアの例には、頚部ジストニア、眼瞼痙攣、口下顎(oromandibular)ジストニア、喉頭ジストニア、及び四肢ジストニアが含まれるが、これらに限定されない。一次又は突発性ジストニアにの場合、ジストニアは他の神経学的異常を伴わずに存在し、また二次的原因は震顫を除いて除外される。ジストニアについての他の分類には、二次的(交換神経性)ジストニア、ジストニア・プラス症候群(例えばミオクローヌスを伴ったジストニア)、及び遺伝的退行性ジストニアが含まれる。本発明は更に、限局性の仕事ジストニアに向けられている。
【0035】
本発明が治療しようとしている運動障害の幾つかの非限定的な例は、舞踏病、バリスムス、及びチックである。舞踏病は、中程度の速度及び振幅の不随意非律動運動であり、該運動は身体の一部分から他の部分へと迅速且つランダムに通過する。それは顔面及び四肢を含むことがあり、また患者にとって姿勢の維持不能を生じる可能性がある。舞踏病は、薬物に誘導された障害又はハンチントン病のような遺伝病の患者に生じる。バリスムスは、不規則かつ予測不能な運動からなり、これらは振幅及び速度が高い可能性がある。殆どの患者において、バリスムスは身体の片側に限定され、反対側の視床下部核の限局的破壊病巣によって生じ得る。それは屡々、半バリスムスと称される。チックは、異常な反復運動又は音声を含むものであり、これらはそれぞれ、その後に運動チック及び音声チックとして分類される。これらの衝撃的な動作は、パターンがランダムで且つ変動する。チックの非限定的な例には、顔面運動、反復性の瞬き、頭部震盪、及び発声が含まれる。ツレット症候群は、音声チック及び運動チックを特徴とする最も良く知られた状態である。
幾つかの実施形態において、患者は哺乳類である。哺乳類の非限定的例には、ヒト、霊長類、マウス、カワウソ、ラット、及びイヌが含まれる。
【0036】
本発明はまた、式(I)の化合物を患者に投与することによって、1以上の運動障害を寛解させる方法を提供する。一つの実施形態において、本発明は、式(I)の化合物を患者に投与することによって、1以上のミオクローヌス運動を寛解させる方法を提供する。ミオクローヌス運動の非限定的例には、負のミオクローヌス、安静時ミオクローヌス、刺激感受性ミオクローヌス、動作ミオクローヌス、アルコール反応性低酸素症後ミオクローヌス、口蓋ミオクローヌス、驚愕症候群、及び脊髄ミオクローヌスが含まれる。一つの非限定的な実施形態において、ミオクローヌスと診断された患者の機能的性能は、式(I)の化合物を患者に投与することによって改善される。一つの実施形態において、ミオクローヌス運動の寛解及び機能的性能の改善は、統一ミオクローヌス評価尺度の使用により評価される。もう一つの実施形態において、ミオクロヌス運動の寛解及び機能的性能の改善は、チャドウィック−マルスデン尺度(Chadwick-Marsden Scale)の使用によって評価される。
【0037】
1以上の震顫の寛解が、式(I)の化合物の患者への投与によって達成される。式(I)の化合物の投与により寛解される震顫の例には、手震顫、腕震顫、音声震顫、頭部震顫、体幹震顫、及び/又は脚部震顫が含まれるが、これらに限定されない。寛解は、当業者に知られた震顫分類尺度、例えば震顫の共同研究臨床分類(the Collaborative Clinical Classification of Tremor)、本態性震顫の分類(震顫研究調査グループ)又はWHIGET(Washington Heights Inwood Genetic Essential Tremor)評価尺度の使用によって評価される。
ジストニア、小脳震顫、チック又は舞踏病の寛解は、式(I)の化合物を患者に投与することによって達成される。式(I)の化合物の投与によって寛解されるジストニアの例には, 全身性ジストニア、限局性ジストニア、行動ジストニア、仕事特異的ジストニア、区域的ジストニア、多巣的ジストニア、半ジストニア、頚部ジストニア、眼瞼痙攣、口下顎ジストニア、喉頭ジストニア、及び四肢ジストニアが含まれる。ジストニア、小脳震顫、チック、又は舞踏病の寛解は、当業者に既知の方法によって評価される。
【0038】
<投与法及び投与量>
治療における使用のために、4−ヒドロキシ酪酸塩のような式(I)の化合物は、純粋な化学薬品として、吸入器を介して微粉末の吸入によって投与することも可能であるが、医薬処方剤として活性成分を提示するのが好ましい。従って、本発明は、式(I)の化合物を、そのための1以上の医薬的に許容可能なキャリア、及び任意に他の治療的及び/又は予防的成分と共に含有する医薬処方剤を提供する。陽イオン及びキャリアは、当該処方剤の他の成分と適合し、且つそのレシピエントに対して有害でないという意味で、「許容可能」でなければならない。
【0039】
医薬処方剤には、経口又は非経腸的(筋肉内、皮下及び静脈内を含む)投与に適したものが含まれる。また、非経腸的投与に適した形態には、インハレーションもしくは吸入法又は鼻による投与、或いは局部(バッカル、直腸、膣、及び舌下を含む)投与に適した形態も含まれる。該処方剤は、適切な場合には、分離された単位投与量形態で便宜に提供されてよく、また、薬学の技術において周知の何れかの方法で調製されてよい。このような方法は、活性化合物を液体キャリア、固体マトリックス、半固体キャリア、微細に分割された固体キャリア、又はそれらの組み合せと合体させる工程と、次いで、必要なときは、該生成物を望ましいデリバリーシステムに成型する工程とを含んでいる。
【0040】
経口投与に適した医薬処方剤は、各々が予め定められた量の活性成分を含有する硬質もしくは軟質のゼラチンカプセル、サシェー又は錠剤のような、分離した単位投与量形態として;粉末又は顆粒として;溶液、懸濁液又はエマルジョンとして;又はチューインガムから活性成分を摂取するための合成樹脂又はチクルのような咀嚼基材の形態で与えられてよい。活性成分はまた、巨丸薬、舐剤又はペーストとして与えられてもよい。経口投与のための錠剤及びカプセルは、結合剤、充填剤、潤滑剤、崩壊剤、又は湿潤剤のような従来の賦形剤を含有してよい。錠剤は、当該技術において周知の方法に従って、即ち、腸溶性被覆材でコーティングされてもよい。
【0041】
経口の液剤は、例えば、水性又は油性の懸濁液、溶液、エマルジョン、シロップ又はエリキシールの形態であってよく、或いは、使用前に水又は他の適切な担体を用いて構成するための乾燥生成物として与えられてもよい。このような液体製剤は、懸濁剤、風味剤、乳化剤、非水性担体(食用油を含んでよい)又は保存剤のような、慣用的な添加剤を含有してよい。
【0042】
本発明による化合物はまた、非経腸的投与(例えば、大量瞬時注入又は連続的注入)のために処方されてよく、またアンプル、予め充填されたシリンジ、小量注入容器のような単位投与量形態で、又は保存剤を添加した多回投与量容器で与えられてもよい。或いは、活性成分は粉末形態であってよい。該組成物は、懸濁液、溶液、又は油性もしくは水性担体中のエマルジョンのような形態をとってよく、また、懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤のような処方化剤を含有してよい。或いは、適切な単体、例えば滅菌済みのパイロジェンを含まない水を用いて使用前に構成するために、活性成分は、滅菌された固体の滅菌単離によって、又は溶液からの凍結乾燥によって得られた粉末の形態であってもよい。
【0043】
上皮への局所投与のために、式(I)の化合物は、軟膏、クリーム又はローションとして処方されてよく、又は経皮パッチの活性成分として処方されてよい。適切な経皮デリバリーシステムは、例えば、A.Fisher等(米国特許第4,788,603号)、Chien等(米国特許第5,145,682号)又はR.Bawa等(米国特許第4,931,279号、同第4,668,506号及び同第4,713,224号)に開示されている。軟膏及びクリームは、例えば、適切な濃化剤及び/又はゲル化剤を添加した水性又は油性の基材を用いて処方されてよい。ローションは、水性又は油性の基材を用いて処方されてよく、また一般には1以上の乳化剤、安定剤、分散剤、懸濁剤、濃化剤又は着色剤を含有するであろう。活性成分はまた、例えば米国特許第4,140,122号、同第4,383,529号、又は同第4,051,842号に開示されたようなイオン泳動を介して送達することもできる。
【0044】
口中での局所投与に適した処方剤には、風味付けされた基材、通常は蔗糖及びアカシアもしくはトラガカンスの中に活性成分を含有するロゼンジ;ゼラチン及びグリセリン又は蔗糖及びアカシアのような不活性基材の中に活性成分を含有する芳香製剤;適切な液体キャリアの中に活性成分を含有する粘膜付着性ゲル、及びマウスウオッシュのような単位投与量形態が含まれる。
所望であれば、上記で述べた処方剤は、例えば、天然のゲル、合成ポリマーゲル又はそれらの混合物のような一定の親水性ポリマーマトリックスと組み合せることによって、使用する活性成分の持続放出を与えるように適合させることができる。
【0045】
キャリアが固体である直腸投与に適した医薬処方剤は、最も好ましくは、単位投与量の座剤として与えられる。適切なキャリアには、ココアバター及び当該技術で通常用いられる他の材料が含まれ、また剤は、前記活性化合物を軟化又は溶融されたキャリアと混合し、続いて、モールド型の中で冷却及び成形することにより、便利に形成されてよい。
膣投与に適した処方剤は、活性成分に加えて当該技術において適切であることが知られているキャリアを含有する、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、又はスプレーとして与えられてよい。
【0046】
吸入による投与のために、本発明による化合物は、吸入器、ネブライザー又は加圧パック、或いはエアロゾルスプレーを放出する他の便利な手段から、便利に送達される。加圧パックは、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適切なガスのような、適切な噴射剤を含有してよい。加圧エアロゾルの場合、投与量単位は、計量された量を放出するための弁を設けることによって決定されてよい。
【0047】
或いは、インハレーション又は吸入法による投与のために、本発明による化合物は、乾燥粉末組成物、例えば、当該化合物及び乳糖又は澱粉のような適切な粉末基材の粉末混合物の形態をとってもよい。該粉末組成物は、単位投与量形態、例えば、カプセルもしくはカートリッジ、又は、例えばその中からインハレータもしくは吸入器を用いて粉末が投与されるゼラチンパックもしくはブリスターパックの形態で与えられてよい。
鼻内投与のために、本発明の化合物は、プラスチックボトル噴霧器のような液体スプレーを介して投与されてよい。これらのうちで典型的なものは、ミストメータR(Winthrop)及びメディヘーラR(Riker)である。
本発明による医薬組成物はまた、例えば風味剤、抗菌剤、又は保存剤のような他のアジュバントを含有してよい。
【0048】
本発明による運動障害を治療する方法はまた、1以上の抗ミオクローヌス剤、抗震顫剤、抗舞踏病剤、抗チック剤、又は抗ジストニア剤との、式(I)の化合物の併用投与を含んでよい。一つの実施形態において、これらの化合物は同時に併用投与される。もう一つの実施形態において、これらの化合物は逐次的に併用投与される。抗ミオクローヌス剤及び抗震顫剤は、当業者に周知である。例えば、ベンゾジアゼピン、抗痙攣剤、及びβ−アドレナリン遮断剤は、ミオクローヌス及び本態性震顫を治療する上で有効であり、またGHBとの併用投与に適していることが知られている。加えて、GABA受容体アゴニストは、GHBとの併用投与に適している。抗ミオクローヌス剤の例には、限定されるものではないが、クロナゼパム、レベチラセタム、バルプロ酸、フェノバルビタール、トピラメート、ゾニスアミド、プリミドン、フェニトイン、5−ヒドロキシトリプトファン、ピラセタム、アセタゾラミド、バクロフェン、フルオキセチン、プロプラノロール、ラモトリジン、スマトリプタン、テトラベナジン、トリヘキシフェニジル、メラトニン、及びアルプラゾラムが含まれる。
【0049】
抗震顫剤の例には、限定されるものではないが、ミオシリン、プロプラノロール、プリミドン、ベンゾジアゼピン類(クロナゼパム、ロラゼパム、アルプラゾラム、ジアゼパム)、ナドロール、メタゾラミド、ギャバペンチン、トピラメート、レベチラセタム、及びボツリヌス毒素が含まれる。抗舞踏病医薬の非限定的例には、ハロペリドール、レセルピン、テトラベナジン及びバルプロ酸が含まれる。抗チック薬には、クロニジン、クロナゼパム、グアンファシン、ハロペリドール、ピモジド、及びテトラベナジンが含まれるが、これらに限定されない。前記式(I)の化合物及び併用投与される薬剤は、単一の医薬組成物で調製することができ、或いは、別々の医薬組成物としても投与できることが理解されるであろう。抗ジストニア剤の例には、限定されるものではないが、ドーパミン作動性薬剤(例えば、ドーパミンアゴニスト、ドーパミン遮断剤、ドーパミン枯渇剤、リチウムを伴った又は伴わないテトラベナジン、クロザピン、オランザピン)、ボツリヌス毒素、及びベンゾジアゼピン類(ジアゼパム、クロナゼパム、ロラゼパム、アルプラゾラム)、バクロフェン、及び抗コリン剤(トリヘキシフェニジル、ジフェンヒドラミン)が含まれる。
【0050】
治療に使用するための式(I)の化合物の量は、選択された特定の化合物だけでなく、投与の経路、治療される状態の重篤度、及び患者の年齢及び状態と共に変化し、また最終的には臨床医又は臨床家の判断に委ねられる。
しかし、一般には、適切な投与量は、睡眠発作を治療するための催眠剤として有効であることが示された範囲、即ち、1日当りのレシピエントの体重当りで約1〜500mg/kg、例えば約10〜250mg/kg体重、25〜約200mg/kg体重であろう。一つの実施形態においては、500mg〜20gの合計1日投与量が投与される。もう一つの実施形態では、2〜12gの合計1日投与量が投与される。他の実施形態において、合計1日投与量は約4.5gである。更なる実施形態において、合計1日投与量は4g、6g又は8gである。幾つかの実施形態において、式(I)の化合物は1日に2回投与される。他の実施形態において、式(I)の化合物は1日に3回投与される。
【0051】
当該化合物は、例えば、単位投与量形態当り0.5〜20g、好適には1〜7.5g、最も好適には2〜5gの活性成分を含有するような単位投与量形態で便利に投与される。
合計の1日投与量、即ち、約500mg〜20gが、1日当り3回、約1〜4月間、必要に応じてそれ以上に亘って投与される。他の実施形態においては、前記の合計1日投与量が常習的に、即ち、治療を終了するための時間制限なしに投与される。
所望の投与量は、単回投与量で、又は適切な間隔で投与される分割投与量として、例えば1日当り2回、3回、又は四回以上の副投与量で与えられるのが便利である。この副投与量自身を更に分割してもよく、例えば、茶匙複数杯の液体組成物又は吸入器からの複数回の吸入に分割してもよい。一つの実施形態においては、1〜4gの投与量が1日2回投与される。
【0052】
幾つかの実施形態においては、XyremRの鎮静効果に対する可能な感受性増大に対して防御するために、患者は毎晩2グラムの投与を受ける。薬物療法に適合するための期間(例えば2週間)の後、ミオクローヌスが未だ存在し且つ厄介であるかどうかを決定するための評価が行われる。もしそうであれば、投与量は毎晩4gにまで増大される。薬物療法に適合するための別の期間(例えばもう2週間)の後に同様の評価が行われ、必要であれば、投与量は毎晩6gにまで増大される。必要に応じて、投与量は、同様の仕方で更に増大される。
【0053】
式(I)の化合物が1日1回投与されるとき、該化合物は、朝、午後、夕方、又は夜の就寝前に投与される。多動性運動障害は睡眠の間は消失するので、日中の投与によって薬物の効果の観察を可能にする。1日2回投与されるとき、最初の投与量は朝に投与され、或いは午後に投与される。2回目の投与量は、約6〜12時間後に投与される。例えば、午後、夕方、又は夜中の就寝前である。
以下の実施例は、本発明を例示し、本発明の理解を助けるために提示されるものであって、如何なる意味においても、特許請求の範囲に定義された発明の範囲を限定するように解釈されるべきではない。
【実施例】
【0054】
重度の低酸素症後ミオクローヌスについて、XyremRの患者一人の臨床試験を行った。患者は、麻酔事故にあった37歳の女性であった。残留昏睡の後に、彼女は覚醒して徐々に回復したが、彼女の音声、頭、近位腕、脚部及び体幹を冒す重度のミオクローヌス攣縮によって完全に不能になった。臨床検査によって、彼女は正のミオクローヌス(活動的攣縮)及び負のミオクローヌス(姿勢堕落)の両方を有していた。彼女のミオクローヌスは、フェノバルビタール、ゾニサミド、クロナゼパム、及びレベチラセタムで治療されたが、有意な改善は見られなかった。試験の前に、彼女はクロナゼパム及びレベルチラセタムで治療された。彼女はペニシリンに対してアレルギー性であり、他の既知の薬物アレルギーはなく、それ以外は一般的に良好な健康状態にあった。
【0055】
<症例報告>
標準の抗ミオクローヌス剤に対して抵抗性の、重度の衰弱性アルコール反応性低酸素症後ミオクローヌスをもった一人の患者において、GHBの開放ラベルでの投与量を見出す盲検評価試験を行った。GHBは、日中に分割投与量で与えられ、十分に許容された。ミオクローヌスの強さ及び重篤度を、非侵襲性の臨床評価尺度である統一ミオクローヌス評価尺度(UMRS)を使用して測定した。加えて、盲検評価者がミオクローヌスにスコアを付すことができるように、患者は、UMRSを行っている間はビデオテープに記録された。これらの方法論は、安静時ミオクローヌス及び刺激感受性ミオクローヌスの完全な分析を示した。動作ミオクローヌス、及び機能的特性もまた、患者が自分で食べ、日常の衛生的仕事を行い、補助を得て歩くことを可能にする実際的に有意義な方法で改善された。
【0056】
患者は、37歳の年齢における重度の低酸素症後ミオクローヌスの評価について、コロンビア大学医学センター運動障害センターに照会された。34歳の年齢において、彼女は随意選択の子宮筋腫摘出術を受け、それが麻酔事故によって複雑化した。低酸素症又は心停止の持続時間は分からなかったが、術後期間に直ちに頻繁な強直・間代発作が認められた。彼女は、昏睡で挿管されたままの状態が続き、その後には気管切開及び栄養管の挿入を必要とした。集中治療室では、ミオクローヌス攣縮及び電位記録的発作が認められた。彼女は、麻酔事故後の重度の衰弱性ミオクローヌスを発症した。彼女の精神状態及び認識は完全に正常であったが、全ての標準ミオクローヌス薬での治療に対して抵抗する重度の不能性ミオクローヌスのために、彼女は全体的に依存的で且つ車椅子に束縛された。長期の入の後、彼女はリハビリセンターに移され、最終的には事故の3年後に、重度のミオクローヌスにより車椅子に束縛された完全に依存的状態で家に戻された。クロナゼパム、バルプロ酸、フェノバルビタール、トピラメート、ゾニサミド及びレベチラセタムを含む抗ミオクローヌス薬物療法の多くの試みは、最小限に成功したに過ぎない。彼女は、バルプロ酸の血小板数低下の副作用、及びゾニサミドにより生じた食欲不振に耐えることができなかった。これらの薬剤のうち、クロナゼパムだけが、投与量を制限する鎮静作用を伴って、彼女のミオクローヌスの重篤度を部分的に改善した。脳のMRIによって、経度の萎縮が明らかになったが、虚血又は構造的傷害の証拠はなかった。逆平均化されたEEG及び体性感覚に誘起された電位は入手できなかった。
【0057】
初期評価に対する抗ミオクローヌス薬物療法には、クロナゼパム(毎日3mg)及びレベチラセタム(毎日2,500mg)が含められた。神経学的試験によって、明らかに重度のミオクローヌス攣縮を伴った僅かな協同的女性が明らかになった。詳細な精神状態試験は、重度のミオクローヌス的な話し方によって阻害されたが、彼女は全ての質問に適切に回答し、困難なく複雑な指令に従った。彼女の家族の報告によれば、彼女の短期及び長期の記憶は損傷を受けていなかった。安静時には、腕、脚部、及び対韓の正のミオクローヌス攣縮が明らかであった。これらの攣縮運動は、患者が自発的に運動を試みたときに悪化して、特に腕の近位領域を冒した。負のミオクローヌス攣縮は頻繁で、延ばした姿勢での腕及び手首を冒した。音響に対する誇張された驚愕及び恐れも存在した。ピンに対する刺激−感受性及び反射は、静止ミオクローヌスの頻度のため評価するのが困難であった。腕のミオクローヌスは、彼女が指を鼻への試験をすること、カップ、スプーン又はペンのような物体を保持すること、又は彼女の腕を延ばした姿勢に維持することを妨げた。彼女は、椅子から立ちあがるこができず、また立っているときは、姿勢支持筋肉における重度の負のミオクローヌス攣縮が歩行を妨げた。
【0058】
<方法>
標準の抗ミオクローヌス剤での治療から有意な利益がなければ、他の抗癲癇剤の経験的な試験は、彼女の状態を改善する可能性はないであろうと思われた。彼女は、ピラセタムの投薬を受けなかったが、レベチラセタムに対して反応しなかったこと、ピラセタムを得ることの困難性、及び彼女の試験(ミオクローヌスの顕著な皮質下成分を示唆する)に基づけば、彼女がこの薬剤に良く反応するであろうことは期待されなかった。患者及び彼の夫から口頭での同意を得た後に、彼女は約6オンスの飲むためのワインを与えられた(アルコール含量は14重量%)。30分以内に、ミオクローヌスにおける劇的な改善が、患者及び彼女の家族に明らかであった。彼女は話すことができ、彼女の手を使用することができ、彼女自身で食べることができ、軽い補助で歩くこともできた。彼女は、アルコールでの試験の前後にビデオテープに記録された。静止ミオクローヌス攣縮は解消され、彼女の話し方はほぼ正常に戻り、彼女は3年間で初めてその腕を滑らかなジェスチャーで使用することができた。腕を前方に延ばしたときには軽度の正及び負のミオクローヌス攣縮が未だ存在したが、両方とも改善された。彼女は補助を得て立つことができ、優しい案内で歩くこともできた。彼女は、アルコールのために僅かに上機嫌に見えたが、鎮静化はされなかった。このアルコールの抗ミオクローヌス効果は数時間で消滅した。
【0059】
アルコールに対する劇的な反応が得られたので、GHB(XyremR、Orphan Medical, Inc)の耐用性及び効力を評価するために、一人の患者について、開放ラベルで投与量を変化させた試験が設計され、これはコロンビア大学医学センター機関検討委員会によって承認された。インフォームドコンセントを得た後に、彼女は、統一ミオクローヌス評価尺度(UMRS)の実行中にビデオテープに記録された。このUMRSは、ミオクローヌスの重篤度及び強度を測定する公認された臨床評価手段であり、抗ミオクローヌス剤の他の試験にも使用されていた[Frucht S.J., et al., Adv Neurology Vol. 89 Lippincott Williams and Wilkins, Philadelphia, 2002:361-376]。この尺度は八つのセクションからなっている。即ち、セクションI:患者質問事項(11項目);セクションII:安静時ミオクローヌス(頻度及び振幅、16項目);セクションIII:刺激感受性ミオクローヌス(17項目);
【0060】
セクションIV:動作を伴うミオクローヌスの重篤度(頻度及び振幅、20項目);セクションV:機能試験に関する性能(5項目);セクションVI:患者の全体的不能の医師による評価(1項目);セクションVII:負のミオクローヌスの存在(1項目);負のミオクローヌスの重篤度(1項目)である。各項目は0〜4の尺度上で評価され、より大きな重篤度又は頻度のミオクローヌスにはより高いスコアが割当てられる。セクションIIIについて、刺激感受性は存在(1)か、又は不存在(0)である;セクションVIIの負のミオクローヌスは、存在(1)か、又は不存在(0)である;セクションVIIIの負のミオクローヌスは、不存在(0)〜重篤(3)である。
【0061】
全てのオフィス来診及びUMRS尺度は、スーパーバイザー医師によって実行された。患者は、各々2週間おきに5回オフィスを訪れた(時間0、2週目、4週目、6週目及び8週目)。各来診時に、医師は患者を調べ、何等かの副作用について問診した。医師は、患者がビデオテープに記録される間にUMRSを実施した。XyremRは、各来診時に医師によって処方された。
最初の来診時にはUMRSが実行され、ビデオテープに記録され、1グラムのGHBを経口で投与され、彼女はオフィスで1時間モニターされた。次いで、彼女は2週間だけ1日2回、オフィスに戻って1グラムの投薬を受けた。2グラムのGHBの投薬を受けた1時間後に、UMRSが実行され、ビデオテープに記録され、次の2週間、彼女は毎日2回、2グラムの投薬を受けた。2週間後、UMRSが実行され、3グラムのGHB投薬を受けた1時間後にビデオテープに記録され、毎日二回だけ3gの投薬を2週間受けた後、同じ手順が、オフィスでの4グラムの投薬の後に行われた。毎日2回の4gの投薬を2週間続けた後に、彼女はUMRSビデオテープ記録のためにオフィスに戻り、毎日2回、4グラムの目標投与量を継続するための決定がなされた。
【0062】
試験設計を知らされていない運動障害神経学者が、基底ライン来診、2gm、3gm、4gm(1回目)及び4gm(二回目)の来診について、ランダムな順序でスコアを付けた。盲検評価者は、盲検評価を維持するために、UMRSのセクションIの治療スコア(患者の自己評価)を与えられなかった。各セクションについてのスコアは、先に説明した通りに計算された[Frucht S.J., et al., Adv Neurology Vol. 89. Lippincott Williams and Wilkins, Philadelphia, 2002:361-376]。
【0063】
<結果>
患者は最初の1gmのGHBの投与量を摂取した後に、僅かな眩暈を報告し、また経口溶液が塩辛い味がするとコメントした。最初の1gm投与量後の患者の臨床試験には僅かな相違しか見られず、また患者の疲労のためUMRSは反復されなかった。最初の2gm投与量を投与した20分以内に、安静時ミオクローヌス及び刺激感受性ミオクローヌスの顕著な減少、並びに動作を伴うミオクローヌスの中程度の改善が、患者、彼女の家族及び試験担当医に明らかであった。この利益は1時間でピークに達し、約3.5時間持続した。ミオクローヌスにおける改善は、彼女がオフィスにおいて3gm、及び4gmの投与量を受けたときにも、投与量に依存した効果で認められた。彼女は、顕著な鎮静又は副作用を伴うことなく、増大する投与量を許容した。正及び負の両方のミオクローヌス攣縮が、治療で改善するように見えた。彼女は、カップを保持したり箸などの台所用品を使用する能力、書く(非常にゆっくりと)能力、また補助を得て歩く能力を再度獲得した。
【0064】
UMRSの各々の副セクションのスコアが表1に提示され、また図1にプロットされている。これらのスコアは、ミオクローヌス運動の強度及び頻度を反映している。より低いスコアは、攣縮運動のより低い頻度及び強度を示している。図1に提示されたデータは、各投与量レベルにおける各UMRS副セクションについての最大スコアの%を示している。例えば、0gm/日の投与量レベルでは、副セクションIIのUMRSは3であり、これは最大スコアである4の75%であった。表1及び図1に示したように、安静時のミオクローヌス(セクションII)は、2gmのGHBの後に劇的に減少し、更に高い投与量では消失した。刺激感受性ミオクローヌス(セクションIII)は、同等に改善された。動作ミオクローヌス(セクションIV)は、投与量に依存した形式で改善されたが、この副セクションに関しては残留障害が存在した。書くこと、螺旋複写、スプーンに注ぎ且つ使用することにおける機能的性能(セクションV)は、80%改善された。盲検化されたビデオテープの検討では、負のミオクローヌスが治療で改善されたとの試験官の印象は確認されなかった。







【0065】
【表1】

【0066】
この開放ラベルの一人患者試験において、経口のGHBは、重度のアルコール感受性低酸素症後ミオクローヌスを寛解させる上で著しく効果的であった。開放ラベル設計に起因するプラセボ効果の可能性にも拘わらず、改善に対する患者の望みがミオクローヌス・スコアに実質的に影響したことはありそうにない。2gm以上のGHBの各投与量は、高度に再現可能な形で作用し、1時間でそのピーク効果を働かせ、3.5時間で徐々に消失した。彼女の不能に関する自己評価(UMRSのセクションI)及びセクションII〜Vの盲検評価の両方によって測定されるように、その利益は明瞭に投与量依存的であった。ミオクローヌス・スコアの盲検評価は、研究者バイアスが結果に対して顕著に影響することをあり得なくする。
【0067】
臨床試験は、鎮静作用、運動失調又は起立性の悪化のような可能な副作用を防止するために、非常に遅い滴定スケジュールで設計された。殆どの形態のミオクローヌスと同様に、低酸素症後ミオクローヌスは睡眠の際には消失し、従って、その効果を観察するためには、薬物を目覚めている間に投与することが必要である。患者は、クロナゼパム及びレベチラセタムでの同時治療の場合でも、顕著な鎮静作用を伴わずに、日中に2回の4gmの投与量を許容することができた。
【0068】
ミオクローヌス・スコアにおける最も劇的な改善は、UMRSのセクションII(安静時のミオクローヌス)及びIII(刺激感受性)において観察された。安静時及び刺激感受性のミオクロヌスは両方とも、毎日2回、2gの投与量で顕著に改善され、また両方とも1日二回の3gmの投与で実際に消失した。動作ミオクローヌスもまた、投与量依存的に改善されたが、1日に2回の4gmの投与では残留欠陥が残った。動作ミオクローヌスの副スコアは、顔面、首、体幹、腕及び脚の動きによってトリガーされたミオクローヌスの頻度及び振幅の両者を測定し、また起立、立つ、及び歩くことによってトリガーされたミオクローヌスを測定する。これらの副セクションのスコアは、動作ミオクローヌスに対する頑強さの低い抗ミオクローヌス効果を反映しているかもしれないが、四肢失調は、セクションIVの尺度上での腕及び脚の運動スコアに偶然寄与する可能性がある。例えば、指を鼻へ又は踵を脛への試験における運動の頻度の崩壊は、実際にその欠陥が根本にある小脳機能不全から生じているときは、ミオクローヌスに起因する可能性がある。低酸素症後ミオクローヌスの多くの患者は、軽度の小脳欠陥を有し(Agarwal P., et al., Curr. Opin. Neurol. 16:515-521 (2003))、UMRSのセクションIVは、これらの成分を説明するようには設計されていない。
【0069】
対照的に、セクションVにおいて観察された機能的性能における改善は更に劇的なものであった。これらの試験は、書くこと、並びに食べ又は飲むために道具に注ぎ、及び道具を使用する等の彼等のケアに責任を負うために患者がしなければならない仕事を測定する。XyremRでの治療の後に、患者の運動制御は、彼女自身が箸で食べることができる点にまで改善した(図2)。患者の最良の可能な性能が測定されるように、時間制限は課さなかった。サンプルの筆記を行うために患者は数分を要し、また六つの文章の1節の筆記(図3)を完成させるために1時間以上を要したが、これらの仕事は、GHBでの治療の前には完全に不可能であった。GHBでの治療の後、遅いペースではあったが、患者は明瞭に書くことができた。
【0070】
盲検化されたビデオテープの検討は、四肢及び胴体の負のミオクローヌス攣縮がアルコール及びGHBで改善されたとの、試験官及び患者の家族の印象を確認しなかった。審査官の印象は、歩行における改善は、負の姿勢ミオクローヌス攣縮の良好な制御に関連しているというものであった。負のミオクローヌスは、典型的には代謝混乱又は毒物露出の設定において見られる[Agarwal P., et al., Curr. Opin. Neurol. 16:515-521 (2003)]。抗癲癇剤での治療が有用である後者の設定は別として、負のミオクローヌスは治療に対して抵抗性であることが周知である。従って、GHBは負のミオクロヌスを治療するために有用である可能性がある。
【0071】
実施例2
この予言的実施例においては、短期の二重盲検のプラセボ対照プロトコールが、約20人の患者で行われ、続いて開放ラベルの延長が行われる。該プロトコールは、二重盲検段階において6.125gm/日までの滴定を必要とし、任意に、開放ラベル段階において9mg/日までの滴定を必要とするであろう。
【0072】
<実験設計>
この研究は、二重盲検のランダム化されたプラセボ対照の平行群における、ジストニアについてのGHB投与量変化試験である。研究集団には、臨床的に顕著なミオクローヌス−ジストニアの患者が含められる。
主要な目的には、1)ジストニア患者におけるGHBの安全性及び許容性を評価すること、及び2)ジストニアの治療におけるGHBの効果を評価することが含まれる。副次的な目的は、1)ジストニアに対するGHB投与量の効果を評価することである。
この研究の二重盲検部分の持続期間は8週間である。この研究の固定投与量部分の持続期間は8週間である。投与量変化部分の持続期間は延長期間、おそらくは1年であろう。
【0073】
この研究が認定されるために、患者は下記の基準に合致しなければならない:1)ジストニアと診断された男性及び女性、ミオクローヌスは病歴として少なくとも1年存在しなければならない。2)年齢≧18歳。3)患者はクロナゼパム、バルプロ酸及びフェノバルビタールを含む、ミオクローヌスのための他の薬物療法で治療されてよい。全ての薬物療法は、スクリーニング前の4週間は安定なまま存在しなければならない。4)出産可能な年齢の女性は非妊娠状態でなければならず、且つこの研究の期間は充分な出産制御を使用しなければならない。5)患者は、臨床的に顕著なジストニアを有していなければならない。6)患者は、研究のための来診及び手続ができ、且つこれに従う意思がなければならない。7)患者は、インフォームドコンセントを与えることができなければならない。
【0074】
次の患者は研究から排除される:1)肝臓疾患又は腎臓疾患を含む臨床的に顕著な医学的状態を伴う患者。2)MMSEスコアが≦24.3の患者。3)大鬱病及び精神病臨床的に顕著な精神医学的病気の履歴を持った患者。4)この研究の間、禁酒をする意思のない患者。5)薬物濫用の履歴のある患者。6)薬物の報告責任を含めて、このプロトコールの全ての側面に従う意思及び能力を示さない患者。
この研究の一次的結果測定値は、UMRSにおける変化である。UMRSは、ミオクローヌスの患者を評価するための、統計的に確認された包括的な臨床評価ツールである。
【0075】
<データ解析>
UMRSのビデオテープ記録は、各患者の来診毎に行われる。これらのビデオテープ及びUMRSフォームは回収され、患者の治療状態を知らされていない二人の鑑定人によって評価される。評価はデータベースの中に入力され、バイオ統計学者によって解析される。以下の評価が、研究の全期間を通して周期的に行われる:医学的及び精神学的履歴、身体検査、生命徴候、実験室的試験、妊娠試験、リード(lead)、EKG、UMRS、MMSE、鬱病調査記録(depression・inventory)、副作用事象、併用治療法、薬物コンプライアンス。
全てのUMRS試験がビデオテープに記録され、患者の治療状態を知らされていないオブザーバーがビデオテープにスコアを付ける。
開放ラベルの投与量変化段階における来診は、月に3回、半年に6回、及び1年に1回行われるであろう。これらの来診時の評価には、スクリーニング来診時に行われたものが含まれる。
【0076】
実施例3:
<患者及び方法>
5人の患者が、2004年の秋に、コロンビア大学医療センターの運動障害部門から試験に登録された。全ての患者は、エタノールに反応する(患者への顕著な変化として定義される)多動性運動障害に冒されており、全てが従来の薬物療法に対して抵抗性であり、又はそれらに耐えられなかった。当該医療センターの機関検討委員会はこの試験を承認し、登録の前に、全ての患者から書面及び口頭でのインフォームドコンセントを得た。顕著な臨床的特徴が以下で明らかにされ、また表1に要約される。




















【0077】
【表2】

t--当該試験に登録時に数年間の症候群の持続; Dx−診断;現在のRx−試験の合いだの現在の薬物療法;過去のRx−過去の薬物療法に対する露出;PHM--低酸素症後ミオクローヌス; MD--ミオクローヌス−ジストニア;ET−本態性震顫
【0078】
患者1: 喘息の履歴をもった37歳の女性で、31歳の時に薬物の過剰投与後に心肺停止を経験し重度のPHMを伴って昏睡から帰還。33歳の時点で、我々のセンターでの最初の評価時には、動作及び随意的ミオクローヌスが重篤であり、顕著な音声ミオクローヌス、並びに体幹及び脚部における不能性の負のミオクローヌス攣縮を伴った。彼女の母親は、グラス2杯のワインが彼女のミオクローヌスを顕著に改善し、彼女の日常的な衛生維持動作を補助する旨を述べた。登録前の9月間、彼女は肺炎で入院の間に皮質下梗塞が続き、左半身麻痺が残った。
【0079】
患者2: ミオクローヌス攣縮の7年の病歴評価のために、我々の医療センターに提示された25歳の男性。彼の家族病歴は、父系の祖母が斜頚で、父系の二人の第一従兄弟がミオクローヌスであり、全てエタノール反応性であることが注目された。しかし、患者はエタノールを全く消費しない。遺伝子試験によって、ε−サルコグリカン遺伝子における突然変異が明らかになり、MDの診断が確認された[Klein C, et al. Am J Hum Genet 67:1314-9 (2000)]。注ぐこと又は書くことのような随意動作によって、頭、首及び腕の顕著な近位ミオクローヌス攣縮がトリガーされた。
【0080】
患者3: 2.5歳の時に彼の右足に始まったミオクローヌスの最初の評価のために、11歳の時に我々のセンターに提示された20歳の男性。体幹及び近位腕のミオクローヌス攣縮は、書くこと、注ぐこと及び用具を使用することを妨げた。17性の時に、彼は強迫性症候群を発症したが、これはパロキセチンで首尾良く治療された。遺伝子試験により、ε−サルコグリカン遺伝子における突然変異が明らかになり、MDの診断が確認された[Klein C, et al. Am J Hum Genet 67:1314-9 (2000)]。数回の発症時に、彼はエタノールを消費し、投与量依存的なミオクローヌスの改善が観察された(最大改善に達するためには80gmのアルコールを必要とする)。
【0081】
患者4: 高校時代に彼の手に軽度の動的震顫を発症した、ETの家族暦をもつ67性の男性。震顫は、彼の道具を用いて食べる能力、カップを保持する能力、及び書く能力を徐々に冒した。彼の震顫は、精密にアルコール反応性であり、グラス一杯のワインを摂取後15分に中程度の震顫が除去され、グラス2杯でほぼ完全に震顫が除去された。彼は、彼のETのために毎日投薬を受けないことを選択した。登録の3年前に、彼は、これもエタノール反応性の頚部ジストニアを発症し、ボツリヌス毒素注射を受け始めた。最後の注射は登録の7週間前に行われた。
【0082】
患者5: 75歳の引退した将校外科医で、62歳の時、彼の手に、彼を引退に追い込んだ動的震顫を発症した。手の動作震顫は徐々に重篤になり、会食のときの社交的困惑を生じさせた。重度の慢性閉塞性肺疾患のため、プロプラノロールでの治療は禁忌であり、ピリミドンは鎮静作用が強過ぎた。彼は、彼の肺疾患のために、現在は如何なる医薬投与も受けていなかったが、それが彼の震顫を悪化させたかもしれない。彼は、社交的な場面ではグラス1〜2杯のワインを飲んだが、これは彼の震顫を穏やかに改善した。
【0083】
<臨床試験設計>
全ての他の薬剤の投与量及びタイミングは、この試験の全体を通して一定に維持され、患者は他の薬物療法を中止しなかった。患者#1〜3は、統一ミオクローヌス評価尺度(UMRS)を使用して試験され、ビデオテープに記録された。また患者#4及び#5は、ワシントンハイツ・インウッド震顫評価尺度(WHIGET)(付録I参照)を使用して試験され、ビデオテープに記録された[Frucht S.J., et al. Adv Neurol 89:361-76 (2002); Louis, E.D., et al. Mov Disord 16:89-93(2001)]。





















【0084】
【表3】



UMRSのセクション1〜6が上記に見られる。
この尺度に関する完全な詳細は参照文献16で入手可能である。
より高いスコアは、より重篤な不随意運動を示す。
各セクションの範囲は{ }の中に見られる。
【0085】
副作用は、良好な臨床実務基準を使用して、軽微であるか、又は重篤であるか(入院になる)が決定され(www.who.int/medicines/library/par/ggcp/ GCPGuidePharmatrials)、また患者は来診の毎に副作用を報告するように依頼された。最初の試験及びビデオテープ記録の後に、患者は経口により1gのナトリウムオキシベートを与えられた(60mLの水の中に溶解された標準の0.5gm/mL溶液を2mL)。1時間後に、上席の著者が試験及びビデオテープを繰返した。経口で2gmのナトリウムオキシベートの投薬を受けた1時間後に試験及びビデオテープ記録が反復されたときは、患者は、2週間後の次の来診まで毎日2回の1gmの投与量(60mLの水の中に溶解された0.5gm/mLの標準溶液を4mL)で維持された。1日2回の2gmの投薬を受けた2週間後、3mgのオフィス投与を受けた後に前記手順が繰返され、最後に、1日2回の3gmの投薬を受けた2週間後、4gmのオフィス投与量を受けた後に前記手順を繰り返された。試験において許容された最大投与量は、毎日2回4gであった。患者及び上席著者は、各来診時に、主に最新の投与量計画に耐容性を示した能力に基づいて、次の投与量レベルに進むかどうかを決定した。最大の許容された投与量を決定した後、患者はオフィスで0.5gm少ない投与量の投薬を受け、試験がビデオテープに記録された。
【0086】
<方法/データ解析>
各来診からの全体のビデオテープセグメント及び患者の書き取りサンプルがコピーされ、試験順序及び識別特徴を隠し、乱数表を使用して、検討のためにランダムな順序に並べた。運動障害の専門化は、試験設計及び投与量計画を知らされないまま、各ビデオテープにスコアを付けた。各来診についての副スコアは、先に記載されたようにして計算された[Frucht S.J., et al. Adv Neurol 89:361-76 (2002)]。我々は、利き腕についてのみ機能的性能(水を注ぐ、スープスプーンを使用する)が実施されるUMRSのセクション5を改変した。患者#2及び#3については非利き腕の左腕においてミオクローヌス攣縮が顕著に悪化したので、これらの仕事は、両腕で実施しながらビデオテープに記録された。これは、UMRSにおけるセクション5の最大スコアを、20から28へと増大させた。
【0087】
<結果>
耐容性: 一過性の頭痛及び眩暈は普通であり、投与量の減少は必要とされなかった(表2)。全ての患者が、投与量を制限する鎮静作用又は情緒不安定を経験したが、これが起きる投与量は、患者の間では2〜4gmで変化した。これらの副作用は、個別の投与量が0.5gm減少されたときに、各患者を分離した。
【0088】
【表4】

SE−副作用; Ser−重度のSE(入院に至る病気を生じる); D−L−SE:投与量を制限する副作用
【0089】
一つの重篤な副作用が、試験中に生じた。患者#1は上部呼吸器感染を発症し、これが喘息の悪化をトリガーして、経口による抗生物質であるプレドニゾンでの治療を必要とし、また頻繁に気管支拡張吸入剤を必要とした。同様の事象が過去にも起きたので、上席著者は、この事象が研究薬物に関連する可能性はないと判断し、試験を継続した。ミオクローヌスは、彼女の喘息の悪化の際に視覚的には悪化したが(彼女の三回目の来診、そのときに彼女は3gmのナトリウムオキシベートの投薬を受けた)、次の来診までに呼吸器感染は除去され、ステロイド及び抗生物質が中止されて、ミオクローヌスは改善された。
【0090】
臨床経過: 不随意運動における改善は投与量依存性であり、また各投与量の投薬を受けた後30〜45分以内に、患者及び上席著者はオフィスで観察することができた。その利益の持続は3.5〜4時間であり、患者がより高い投与量まで滴定されたときに、彼等は投与量が徐々になくなることを知るようになった。患者は、エタノールの効果に類似した治療の利益を記載した。投与量を制限する沈静化作用は、概ね、患者が許容できるエタノールの最大量と相関した。我々は、試験の経過の際に薬物の効果の減弱を観察しなかった。5人の患者全員が、試験の終了後には薬物の摂取を継続することを決定し、また作用の四時間の継続に起因して、患者#1及び#2については投与量計画が調節された。
【0091】
薬効の盲検評価:
ミオクローヌス患者(#1〜3): 三人のミオクローヌス患者において、安静時のミオクローヌス(UMRSのセクション2)及び刺激感受性ミオクローヌス(セクション3)は、投与量に依存した形で改善された(表3a〜c)。動作ミオクローヌス(セクション4)は、50%、57%及び88%だけそれぞれ改善されたのに対して、機能的性能(セクション5)は、40%、60%及び25%だけ改善された(ビデオテープセグメント1〜3)。患者の自己評価スコアは、患者#2及び#3については改善されたが、患者#1については変化がなかった。医師の全体的な評価スコア(UMRSパート6)は、患者#2及び#3については「軽度」(4のうちの1)であり、試験の全体を通して未変化のままであったのに対して、患者#1においては、スコアは重度の不能(4)から軽度の障害(2)へと減少した。
【0092】
重度の動作ミオクローヌスは、患者#1がペンを紙の上に置くことを妨げ、或いはスプーンをカップの中に入れるのを妨げることが観察された。2.5gmのナトリウムオキシベートの投薬を受けた1時間後に、彼女のスプーンの制御は改善された。患者#2において、書くこと、スプーンに注ぎ、スプーンを使用することは、ミオクローヌスの近位且つ軸動揺をトリガーした。3gmのナトリウムオキシベートの投薬を受けた後、攣縮の振幅及び頻度は減少し、運動はより滑らかになった。患者#3においては、歩くことが右脚のミオクローヌス攣縮をトリガーし、また書くこと及び注ぐことで激しい近位且つ体幹のミオクローヌスが活性化された。彼の機能的性能スコア(UMRSのセクション5)の盲検検討は変化なかったが、書くこと及び注ぐことは適度に改善されたように見えた。
【0093】
本態性震顫のスコア(患者#4及び#5): 盲検でのビデオテープの検討によって、患者#4においては79%、患者#5においては48%の、支持震顫及び動作震顫における投与量依存的改善が明らかになった(表3d及びe)。安静時震顫は一人の患者には存在せず、また他の患者でも軽度であったので、安静時震顫のスコアは計算されなかった。患者#4における斜頚の重篤度の盲検評価は、毎日2回の1gmの投薬で、「中程度」から「軽度」へと減少した。患者#4の治療前の検査によって、書くこと、スプーンを使用すること、及び飲むことでの古典的な動的震顫が明らかになった。2gmのナトリウムオキシベートンの後、震顫振幅は顕著に減少した。注いだり、スプーンを使用したり、また飲むときに、患者#5の動的震顫は更に重篤であった。2mgのナトリウムオキシベートの投薬を受けた後にも未だ存在したが、この振幅は減少し、随意運動は更に滑らかになった。
【0094】
【表5】








b: 患者2についてのUMRS副スコア


c: 患者3についてのUMRS副スコア


d: 患者4についてのWHIGET副スコア


e: WHIGET sub scores for patient 5

【0095】
<考察>
この開放ラベル試験において、ナトリウムオキシベートは、エタノール反応性のミオクローヌス及び震顫の盲検評価において、投与量依存性の改善を生じた。当該薬物は、臨床的利益を生じる投与量で許容された。最も普通の副作用は鎮静化であり、これもまた投与量依存性であったが、臨床的利益を生じる投与量は鎮静−制限投与量よりも低かった。
【0096】
XyremRは、現在は合衆国において、睡眠発作患者における脱力発作の治療のためにのみ承認されている。XyremRの投与を受ける全ての患者は、該薬物をモニター及び分配する中央登録機関であるXyremR・サクセスプログラムに登録されなければならない[Fuller, D.E., et al. Drug Saf 27:293-306 (2004)]。XyremR・サクセスプログラムは、流用又は不適切な使用の事件を伴わずに、当該薬物の適切かつ安全な使用を保証してきた[Stahl P., et al. Sleep 27(suppl): A247 (2004)]。ナトリウムオキシベートは、医療センターの機関検討委員会によって承認されたプロトコール外の運動障害の患者に使用されるべきではない。これらのプロトコールは、確認された臨床評価尺度を使用した、ビデオテープに記録された試験又はプラセボ対照設計を含むべきである。患者の選択は重要であり、活性物質の濫用の履歴のある患者、コンプライアンスの乏しい患者、又は大鬱病の患者は、参加を排除すべきである。これは、エタノール濫用の増大したリスクが存在するDM患者において特に関係があり、また治療的利益についての研究において、その投与量計画を調節し得る難治性の多動性運動障害の患者においても関係がある。
【0097】
ナトリウムオキシベートの抗ミオクローヌス及び抗震顫活性の機構は、未だ知られていない。γ−ヒドロキシ酪酸(GHB)は、脳において天然に存在し、その前駆体であるγ−アミノ酪酸(GABA)の代謝を通して形成される[Waszkielewicz, A., et al. Pol J Pharmacol 56:43-9 (2004)]。GHB受容体はGABA−B受容体とは異なり、薬物として与えられるときには、幾らかのGHBがGABAに変換される[Wu, Y. et al. Neuropharmacology 47:1146-56 (2004); (Waszkielewicz, A., et al. Pol J Pharmacol 56:43-9 (2004)]。ナトリウムオキシベートは、直接に又はGABAへの変換を介して、GABA−B受容体を介して作用することができる[Kaupmann, K., et al. Euro J Neuro 18:2722-2730(2003)]。しかし、バクロフェンのようなGABA−BアゴニストはET又はミオクローヌスを改善せず、またクロナゼパムはETに対する最小の効果を有していて、他の機構が関与し得ることを示唆している。
【0098】
我々の試験は開放ラベルなので、プラセボ効果は、当該データの他の患者へのより広い適用を制限し、また患者#1〜3(UMARSのセクション1)による利益の認知に寄与する可能性がある。しかし、幾つかのレッスンは我々の実験から学習され得る。患者#1は、エタノール反応性PHMをもった我々の以前の患者に類似している[Frucht, S.J., et al. Mov Disord 20:1330-7(2005)]。顕著な刺激感受性の近位攣縮及び姿勢の負のミオクローヌスは、療法の症例における網膜反射ミオクローヌスに一致したパターンを示唆する[Hallett, M., et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry 40:253-64(1977)]。網膜反射PHMは充分に稀であり、この患者集団におけるナトリウムオキシベートの二重盲検プラセボ対照試験は実行可能でないかもしれない。従って、標準の抗ミオクローヌス薬が失敗したときに、これらの患者におけるエタノールの試験投与量を考慮することは合理的であると思われる。エタノールに反応する患者は、ナトリウムオキシベートでの治療からも利益を得ることができるであろう。ミオクローヌスはまた、我々の二人のMDの患者においても改善され、この発見はPrioriの観察に類似している[Priori, A., et al. Neurology 54:1706(2000)]。しかし、MDの集団においてエタノール濫用のリスクが与えられれば、MD患者の治療として推奨できるようになる前に、ナトリウムオキシベートの長期の耐容性が確立されなければならない。
【0099】
ETのための現在の治療には、プリミドン、プロプラノロール、ギャバペンチン、レベチラセタム、トピラメート、及び1−オクタノールが含まれる[Findley, L.K., et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry 48:911-5(1985); Baruzzi, A., et al. Neurology 33:296-300(1983); Ondo, W., et al. Mov Disord 15:678-382(2000); Handforth, A., et al. Mov Disord 19:1215-21(2004); Connor, G.S. et al. Neurology 59:132-4(2002); Shill, H.A., et al. Neurology 62:2320-2(2004)]。腹側中間視床の深部脳刺激(DBS)は、現在のところ、付属震顫の直接的な除去を生じるための最も信頼性のある技術である[Vaillancourt, D.E., et al. Neurology 61:919-25(2003)]。両側刺激は、典型的には、頭部震顫及び音声震顫のために必要とされ、DBSの不可避的であるが小さい手術リスク及び遅延したリード故障又は感染が関心事である[Berk, C., et al. J Neurosurg 96:615-8(2002); Yoon, M.S., et al. Stereotact Funct Neurosurg 72:241-4(1999); Binder, D.K., et al. Steroetact Funct Neurosurg 80:28-31(2003); Kondziolka, D., et al. Stereotact Funct Neurosurg 79:228-33(2002)]。
【0100】
本発明は、式Iの化合物及び本発明の他の化合物を用いて、他のアルコール反応性運動障害の患者を治療する方法を提供する。本発明はまた、エタノールから利益を受けない運動障害(例えば全てのET患者の半分)が、治療から利益を受けるかどうかを評価するための方法を提供する。もしそうでなければ、薬物に対する反応によって、応答性の患者と非応答性の患者の間の病原性における潜在的な差が明らかになるであろう。
【0101】
開放ラベルのパイロット許容性、及びエタノール反応性運動障害の5人の患者の薬効研究において、我々は、ナトリウムオキシベートがミオクローヌス及び震顫を改善し、またこれらの患者が薬物の日中投与に耐えられることを示した。多動性運動障害の患者におけるこの薬剤の更なる研究が正当化される。
【0102】
実施例4:
<臨床試験>
18歳以上の20人の患者を、コロンビア大学医療センターの運動障害部門における臨床実務から動員した。薬物療法に抵抗性でエタノール反応性の、ミオクローヌス(6PHM、3MD、2PME)又はET(9人の患者)の適格な患者(表1)が、2004年2月から2005年3月までに登録をオファーした。医療センターの機関検討委員会は、このプロトコールを承認し、全ての参加者から書面でのインフォームドコンセントを得た。全員が、エタノールの摂取で改善される(自己報告による)ミオクローヌス又はETを有していた。全ての患者は薬物療法に耐性であり、これは、最良の医薬治療からでも不充分な利益しか得られないものとして、又は治療に耐えられないものとして定義される。他の薬物療法の投与量及びタイミングは、試験の前後で一定に維持された。



























【0103】
【表6】







表1: 20人の患者の臨床的特徴がこの表に纏められている。
Dx:診断; Age:登録時の年齢; Sx:登録時における症状の年で
の持続期間; 現在の方法;登録時において継続しているもの;
過去の方法:不随意運動の治療のために過去に取られた薬物療法
(現在投与されているものを除く); Rx?:試験の完了後にナト
リウムオキシベートでの治療を継続することの決定(イエス、又
はノー); 投与量:試験の完了の際のナトリウムオキシベートの
合計1日投与量。
【0104】
12人の男性及び8人の女性が登録された。患者#6、並びに#1、#2、#7、#12及び#13からの結果は、以前に報告された[Frucht, S.J., et al. Mov Disord 20:745-51(2005); Frucht, S.J., et al. Mov Disord 20:1330-7(2005)]。平均年齢/症状持続時間は、43.9歳/12.3年(ミオクローヌス)及び71.2歳/26.7年(ET)であった。ミオクローヌスの患者は、各来診時に統一ミオクローヌス評価尺度(UMRS)を使用して試験され、ビデオテープに記録された。また、ETの患者は、改変されたワシントンハイツ・インウッド遺伝性本態性震顫評価尺度(WHIGET;付録I参照)を使用して試験され、ビデオテープに記録された[Frucht, S.J., et al. Mov Disord 20:1330-7(2005)]。最初の基底ライン試験及びビデオテープ記録の後に、患者は経口により1gのナトリウムオキシベートを与えられ(60mLの水の中に溶解された標準の0.5gm/mL溶液を2mL)、また1時間後にビデオテープ試験が繰返された。1.5gmのナトリウムオキシベートの投薬を受けた1時間後に試験及びビデオテープ記録が反復されたとき、患者は、2週間後の次の来診まで1gmT.LD.(食前に摂取)の投与量に維持された。2週間の間隔でのその後の来診及び投与量滴定が、患者が治療の結果に満足する最大投与量(3gmT.I.D)に達するまで繰返されるか、又は彼等が厄介と思われる副作用を発症するまで繰返された。患者#1、2、6、7、12及び13についての投与量は僅かに異なっていたが(1gmBID,2gmの投与量増加で、5gmBIDの最大投与量まで)、オフィス来診及びビデオテープ記録のプロトコールは、それ以外は同一であった。




【0105】
【表7】



UMRSのセクション1〜6が上記に見られる。
この尺度に関する完全な詳細は参照文献16で入手可能である。
より高いスコアは、より重篤な不随意運動を示す。
各セクションの範囲は{ }の中に見られる。
【0106】
<評価及びデータ解析>
各来診からの全体のビデオテープセグメント及び患者の書き取りサンプルがコピーされて、ランダムな順序に並べられ、試験順序又は薬物投与量を解明し得る識別的特徴は除去された。情報を知らされない運動障害神経学者が、UMRS又はWHIGETを使用して、各ビデオテープセグメントにスコアを付けた。各来診についての副スコアが、先に記載されたようにして計算された[Frucht, S.J., et al. Mov Disord 20:1330-7(2005)]。第一の二つのET症例からのデータに基づき、またα=0.05、パワー=80%、及び 治療後の震顫重篤度の25%減少を仮定して、我々は8例のET症例が必要とされると計算した。同じ数のミオクローヌス患者は、治療後に動作ミオクローヌスの重篤度における25%の減少を検出するために、>80%パワーを提供するであろう。治療の前後のスコアについて、対応スチューデントt検定を行った。
【0107】
<結果>
ETの患者(患者#15)は、オフィスにおいて1.5gmのナトリウムオキシベートの投薬を受けた後に、15分間隔で、カップからもう一つのカップへ水を注ぐことを観察され、ビデオに記録された。治療後の45分及び60分において、注ぎの際の動作震顫における改善が明らかであった。治療前には、ETを示す患者#17において、仕事の際の震顫が明らかであった(図4)。仕事の際の動的震顫の改善が、ナトリウムオキシベートで治療した後に明らかであった(図4)。
【0108】
安静時のミオクローヌスは、治療前の患者#3(MD)及び#11(PHM)に存在し、それぞれ3mg及び2.5mgのナトリウムオキシベートの投薬を受けた後に消失した。PMEを示す患者#4において、治療前には、音響及びピン刺しに対する刺激感受性ミオクローヌスが存在した。3gmのナトリウムオキシベートの投薬を受けた後には、右手の刺激感受性ミオクローヌスのみが残った。指を鼻への動作ミオクローヌス、及び負のミオクローヌス姿勢堕落は、ナトリウムオキシベートの投薬を受ける前の患者#6(PHM)において重篤であった。治療後にも未だ存在したが、動作ミオクローヌスは顕著に改善され、患者#6は今や補助なしで立つことが可能であった。スープスプーンを使用した機能的性能の一つの測定値は、患者#9(PHM)及び#5(PME)において、ナトリウムオキシベートの投薬を受けることで改善された。
【0109】
安静時ミオクローヌス、刺激感受性ミオクローヌス、動作ミオクローヌス、及び機能的性能の重篤度は、平均姿勢震顫及び動的震顫スコアの場合(表2、図4)と同様に減少した。これらの測定値における最大の改善は、試験に用いた最高投与量(ミオクローヌスについて2.5gm、ETについて1.5gm)の直下の投与量で生じた。
【0110】
【表8】

表2: ナトリウムオキシベートの種々の個別の投与量における、動的震顫スコア及び姿勢震顫スコアが、左から第二欄及び第三欄に示されている。静止時ミオクローヌス、刺激感受性ミオクローヌス、動作ミオクローヌス及び機能的性能についての、ナトリウムオキシベートの個々の様々な投与量におけるスコアが、左から第五欄〜第八欄に示されている。P値は、治療前の値に対する各スコアについてイタリックで示されている:値≦0.05は記号*で注記され、値≦0.01は記号**で注記されている。
【0111】
ミオクローヌス患者について、ナトリウムオキシベートの平均最終1日投与量は、6.5g(3〜9gmの範囲)であり、ETについては4.3gm(1.5〜7.5gmの範囲)であった。軽度の一過性の副作用には、眩暈(35%)、頭痛(20%)、情動性(20%)及び嘔吐(10%)が含まれた。投与量滴定は、充分な利益が得られたため二人の患者において停止され、又は鎮静作用(60%)又は失調症(20%)によって制限された。これらの副作用は、投与量が以前のレベルにまで減少されたときには除去された。14人の患者が、試験の完了後にも当該薬剤を継続することを選択した。
【0112】
<考察>
薬物療法に対して抵抗性である多動性運動の20人の患者において、ミオクローヌス及び震顫の盲検評点は、この試験におけるナトリウムオキシベート療法で減少した。日中の薬物投与の耐容性は許容可能であり、患者の大部分は試験の完了後も治療を継続することを選択した。
【0113】
我々は、従来の治療に対して抵抗性である患者が実験のプラセボ利益に傾斜し易いことの可能性を含めて、開放ラベル設計の限界を知っている。これら障害のための治療法としてのナトリウムオキシベートの効力の証明は、二重盲検のプラセボ対象試験を必要とするであろう。薬物濫用、鬱病、非コンプライアンス、又は彼等の薬物投与量を調節する傾向をもった個体はこの薬物を摂取すべきでないので、これら試験のための患者の選別は重要である。我々は、本研究に、WHIGET又はUMRS尺度に含められたものを越えた、クオリティーオブライフ又は機能的性能の測定値を含めなかった。これらの測定値は、将来の試験設計にとっては重要であろう。
【0114】
我々は、幾つかの因子が、当該薬物についての生物学的治療効果をサポートすると確信している。一つの説得力のある議論は、患者の大部分が、試験後に当該薬物の継続を決定することである。もう一つは、患者が更に高い投与量にまで滴定されるときに、殆どが、摂取後45〜60分の薬物の作用開始、及び4〜5時間で消失する傾向が有益であることを知るようになることである。盲検化されたミオクローヌス及び震顫のスコアにおいて利益が増大することは、投与量が増大するときに観察された。最も顕著な改善は、最大投与量の直ぐ下の投与量において見られた。スコアの軽度の悪化が、数人の患者に用いられた最大の投与量で生じた。この効果の一つの可能な説明は、この最大の投与量がこれら患者における小脳欠陥を暴露して、彼等の性能を僅かに損なうということである。
【0115】
ミオクローヌス及び震顫におけるナトリウムオキシベートの作用機構は未知のまま残されているが、GABA作動性の機構が可能である。GABAA受容体を欠失したマウスは、エタノールによって完全に阻害される本態性様の震顫を示し、これはGABA作動性機構がETにおいて重要であり得ることを示唆している[Kralic, J.E. et al. J Clin Invest 115:774-779(2005)]。或いは、ナトリウムオキシベートは、これらの患者において運動神経を正常な状態に修復することができ、例えば、PHMにおける腹側視床の活性化、又はETにおける両側小脳半球の活性化を正常化する[Frucht, S.J., et al. Neurology 62:1879-1881(2004); Boecker, H. et al. Ann Neurol 39:650-658(1996).]。
【0116】
以上、明瞭化及び理解を目的として本発明を幾らか詳細に説明してきたが、これら特定の実施形態は例示であって限定的ではないと看做されるべきである。当業者は、この開示を読むことにより、本発明の真の範囲を逸脱することなく、形態及び詳細における種々の変更をなし得ることを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】図1は、1日投与量の関数としての、統一ミオクローヌス評価尺度スコアのグラフ図である。
【図2】図2は、4グラムのXyremRの1日2回投与での治療開始時に、箸を使用する治療後の患者の写真である。
【図3】図3は、図2に示した患者が、XyremR出の治療の後に、彼女自身が自発的に且つ補助なしに書いた文字の写真である。
【図4】図4は、ナトリウムオキシベートの投薬を受ける前後で、ETを有する患者が描いた螺旋を示している。患者#4(PME)について[A:治療前;B:治療後(2.5グラムのTID)]、及び患者#18(ET)について[C:治療前;D:治療後、3グラムのTID]の、治療前及び治療後の螺旋が示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミオクローヌスを治療するための方法であって、次式(I)の化合物を患者に投与することを特徴とする方法。
【化1】

ここで、
nは、1〜2であり、Xは、H、医薬的に許容可能な陽イオン、又は(C1〜C4)アルキルであり、Yは、OH、(C1〜C4)アルコキシ、CH(Z)CH3、(C1〜C4)アルカノイルオキシ、フェニルアセトキシ、又はベンゾイルオキシであるか、 或いは、X及びYは、単結合として結合され、
Zは、OH、(C1〜C4)アルコキシ、(C1〜C4)アルカノイルオキシ、フェニルアセトキシ、又はベンゾイルオキシであり、
前記ミオクローヌスは、ジストニアを伴ったアルコール感受性の本態性ミオクローヌスではない。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記患者は、負のミオクローヌス、安静時ミオクローヌス、刺激感受性ミオクローヌス、又は動作ミオクローヌスの1以上を示す方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、更に、前記患者に対して第二の抗ミオクローヌス剤を投与することを含んでなる方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記第二の抗ミオクローヌス剤が、クロナゼパム、レベルチラセタム、バルプロ酸、フェノバルビタール、トピラメート、及びゾニサミドから選択される方法。
【請求項5】
負のミオクローヌスを寛解させるための方法であって、式(I)の化合物を患者に投与することを含んでなる方法。
【請求項6】
安静時ミオクローヌスを寛解させるための方法であって、式(I)の化合物を患者に投与することを含んでなる方法。
【請求項7】
刺激感受性ミオクローヌスを寛解させるための方法であって、式(I)の化合物を患者に投与することを含んでなる方法。
【請求項8】
動作ミオクローヌスを寛解させるための方法であって、式(I)の化合物を患者に投与することを含んでなる方法。
【請求項9】
請求項5、6、7又は8に記載の方法であって、前記寛解は、統一ミオクローヌス評価尺度の使用により評価される方法。
【請求項10】
請求項5、6、7又は8に記載の方法であって、前記寛解は、チャドウィック−マルスデン尺度の使用により評価される方法。
【請求項11】
ミオクローヌスと診断された患者の機能的性能を改善する方法であって、式(I)の化合物を患者に投与することを含んでなる方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記改善は、統一ミオクローヌス評価尺度の使用により評価される方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法であって、前記改善は、チャドウィック−マルスデン尺度の使用により評価される方法。
【請求項14】
ミオクローヌスを治療する方法であって、ナトリウムオキシベートを患者に投与することを含んでなり、前記ミオクローヌスはジストニアを伴ったアルコール感受性の本態性ミオクローヌスではない方法。
【請求項15】
ミオクローヌスを治療する方法であって、γ−ヒドロキシ酪酸ナトリウムを患者に投与することを含んでなり、前記ミオクローヌスはジストニアを伴ったアルコール感受性の本態性ミオクローヌスではない方法。
【請求項16】
本態性震顫を治療するための方法であって、次式(I)の化合物を患者に投与すること含んでなる方法:
【化2】

ここで、
nは、1〜2であり、Xは、H、医薬的に許容可能な陽イオン、又は(C1〜C4)アルキルであり、Yは、OH、(C1〜C4)アルコキシ、CH(Z)CH3、(C1−C4)アルカノイルオキシ、フェニルアセトキシ、又はベンゾイルオキシであるか、 或いは、X及びYは、単結合として結合され、ここでのZは、OH、(C1−C4)アルコキシ、(C1〜C4)アルカノイルオキシ、フェニルアセトキシ、又はベンゾイルオキシである。
【請求項17】
請求項1又は16に記載の方法であって、Yが、OH又は(C1−C4)アルカノイルオキシである方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、Xが、医薬的に許容可能な陽イオンである方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、Xが、Na+である方法。
【請求項20】
請求項1又は16に記載の方法であって、Yが、OHであり、XがNa+である方法。
【請求項21】
請求項1又は16に記載の方法であって、Xが、H又は医薬的に許容可能な陽イオンであり、YがOHである方法。
【請求項22】
請求項1又は16に記載の方法であって、前記式(I)の化合物が、γ−ブチロラクトンである方法。
【請求項23】
請求項1又は16に記載の方法であって、患者が、良性震顫、姿勢震顫、又は動的震顫のうちの1以上を示す方法。
【請求項24】
請求項16に記載の方法であって、更に、第二の坑震顫剤を患者に投与することを含んでなる方法。
【請求項25】
請求項16に記載の方法であって、前記第二の坑震顫剤が、ミソリン、プロプラノロール、ギャバペンチン、レベチラセタム、及びトピラメートからなる群から選択される方法。
【請求項26】
請求項1又は16に記載の方法であって、約1〜500mg/kgの1日投与量が投与される方法。
【請求項27】
請求項1又は16に記載の方法であって、約500mg〜約20gの1日投与量が投与される方法。
【請求項28】
請求項1又は16に記載の方法であって、約2〜10gの1日投与量が投与される方法。
【請求項29】
請求項1又は16に記載の方法であって、約1〜5gの投与量が1日2回投与される方法。
【請求項30】
請求項28又は29に記載の方法であって、ナトリウムオキシベートが投与される方法。
【請求項31】
請求項1又は16に記載の方法であって、前記式(I)の化合物が、医薬的に許容可能なキャリアと組み合せて経口で投与される方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法であって、前記式(I)の化合物が、γ−ヒドロキシ酪酸ナトリウムである方法。
【請求項33】
請求項31に記載の方法であって、前記キャリアが、液体である方法。
【請求項34】
請求項31に記載の方法であって、前記キャリアが錠剤又はカプセルである方法。
【請求項35】
請求項1又は16に記載の方法であって、前記式(I)の化合物が、医薬的に許容可能なキャリアと組み合せて、非経腸的に投与される方法。
【請求項36】
請求項35に記載の方法であって、前記化合物が、注射又は注入により投与される方法。
【請求項37】
請求項1又は16に記載の方法であって、前記化合物が吸入により投与される方法。
【請求項38】
請求項1又は16に記載の方法であって、前記化合物が、経皮パッチにより投与される方法。
【請求項39】
請求項1又は16に記載の方法であって、前記式(I)の化合物が、遅延放出投与量形態で投与される方法。
【請求項40】
請求項39に記載の方法であって、前記式(I)の化合物が、インビボでその代謝を阻害する化合物と組み合わせて投与される方法。
【請求項41】
請求項40に記載の方法であって、前記式(I)の化合物が注入により投与される方法。
【請求項42】
請求項1又は16に記載の方法であって、前記患者が、哺乳類である方法。
【請求項43】
請求項1又は16に記載の方法であって、前記哺乳類が、ヒト、霊長類、マウス、又はラットである方法。
【請求項44】
手震顫を寛解させる方法であって、前記式(I)の化合物を患者に投与することを含んでなる方法。
【請求項45】
腕震顫を寛解させる方法であって、前記式(I)の化合物を患者に投与することを特徴とする方法。
【請求項46】
請求項44又は45に記載の方法であって、前記寛解が、震顫の共同研究臨床分類の使用により評価される方法。
【請求項47】
請求項44又は45に記載の方法であって、前記寛解が、本態性震顫の分類の使用により評価される方法。
【請求項48】
請求項44又は45に記載の方法であって、前記寛解が、WHIGET尺度の使用により評価される方法。
【請求項49】
本態性震顫を治療する方法であって、ナトリウムオキシベートを患者に投与することを含んでなる方法。
【請求項50】
本態性震顫を治療する方法であって、ナトリウムオキシベートを患者に投与することを含んでなる方法。
【請求項51】
多動性運動障害を治療するための治療方法であって、有効量の次式(I)の化合物を、ミオクローヌスに冒されたヒトに投与することを特徴とする方法。
【化3】

ここで、
nは、1〜2であり、Xは、H、医薬的に許容可能な陽イオン、又は(C1〜C4)アルキルであり、Yは、OH、(C1〜C4)アルコキシ、CH(Z)CH3、(C1−C4)アルカノイルオキシ、フェニルアセトキシ、又はベンゾイルオキシであるか、 或いは、X及びYが、単結合として結合され、ここでのZは、OH、(C1−C4)アルコキシ、(C1〜C4)アルカノイルオキシ、フェニルアセトキシ、又はベンゾイルオキシであり、前記の量は、前記ミオクローヌスの少なくとも一つの症状を寛解させるのに有効であり、前記ミオクローヌスは、ジストニアを伴ったアルコール感受性の本態性ミオクローヌスではない。
【請求項52】
請求項51に記載の方法であって、前記ミオクローヌスが、アルコール反応性の低酸素症後ミオクローヌスである方法
【請求項53】
請求項51に記載の方法であって、前記ミオクローヌスが、口蓋ミオクローヌスである方法
【請求項54】
請求項51に記載の方法であって、前記ミオクローヌスが、驚愕症候群である方法
【請求項55】
請求項51に記載の方法であって、前記ミオクローヌスが、脊髄ミオクローヌスである方法
【請求項56】
多動性運動障害を治療するための治療方法であって、ジストニア、震顫、又は他の多動性運動障害に冒されたヒトに対して、有効量の次式(I)の化合物を投与すること含んでなる方法:
【化4】

ここで、
nは、1〜2であり、Xは、H、医薬的に許容可能な陽イオン、又は(C1〜C4)アルキルであり、Yは、OH、(C1〜C4)アルコキシ、CH(Z)CH3、(C1−C4)アルカノイルオキシ、フェニルアセトキシ、又はベンゾイルオキシであるか、 或いは、X及びYが単結合として結合され、ここでのZは、OH、(C1−C4)アルコキシ、(C1〜C4)アルカノイルオキシ、フェニルアセトキシ、又はベンゾイルオキシであり、前記の量は、前記運動障害の少なくとも一つの症状を寛解させるのに有効である。
【請求項57】
請求項56に記載の方法であって、前記運動障害が、ジストニアである方法
【請求項58】
請求項57に記載の方法であって、前記ジストニアが、全身性ジストニアである方法
【請求項59】
請求項57に記載の方法であって、前記ジストニアが、限局性ジストニアである方法
【請求項60】
請求項56に記載の方法であって、前記震顫が、本態性震顫である方法
【請求項61】
請求項56に記載の方法であって、前記震顫が、小脳震顫である方法
【請求項62】
請求項56に記載の方法であって、前記運動障害が、チックである方法
【請求項63】
請求項56に記載の方法であって、前記運動障害が、バリスムスである方法
【請求項64】
請求項56に記載の方法であって、前記運動障害が、舞踏病である方法
【請求項65】
請求項56に記載の方法であって、前記舞踏病が、ハンチントン病であることができる方法
【請求項66】
請求項51又は56に記載の方法であって、Yが、OH又は(C1−C4)アルカノイルオキシである方法。
【請求項67】
請求項66に記載の方法であって、Xが、医薬的に許容可能な陽イオンである方法。
【請求項68】
請求項67に記載の方法であって、Xが、Na+である方法。
【請求項69】
請求項51又は56に記載の方法であって、Yが、OHであり、XがNa+である方法。
【請求項70】
請求項51又は56に記載の方法であって、前記式(I)の化合物が、γ−ブチロラクトンである方法。
【請求項71】
請求項51又は56に記載の方法であって、前記式(I)の化合物が、医薬的に許容可能なキャリアと組み合せて経口で投与される方法。
【請求項72】
請求項71に記載の方法であって、前記式(I)の化合物が、γ−ヒドロキシ酪酸ナトリウムである方法。
【請求項73】
請求項71に記載の方法であって、前記キャリアが、液体である方法。
【請求項74】
請求項71に記載の方法であって、前記キャリアが、錠剤又はカプセルである方法。
【請求項75】
請求項69に記載の方法であって、約1〜500mg/kgの1日投与量が投与される方法。
【請求項76】
請求項51又は56に記載の方法であって、約0.5〜20gの1日投与量が、投与される方法。
【請求項77】
請求項76に記載の方法であって、γ−ヒドロキシ酪酸ナトリウムが、投与される方法。
【請求項78】
請求項51又は56に記載の方法であって、前記式(I)の化合物が、遅延放出投与量形態で投与される方法。
【請求項79】
請求項78に記載の方法であって、前記式(I)の化合物が、インビボでその代謝を阻害する化合物と組み合わせて投与される方法。
【請求項80】
請求項51又は56に記載の方法であって、前記式(I)の化合物が、非経腸的に投与される方法。
【請求項81】
請求項79に記載の方法であって、前記式(I)の化合物が、注入により投与される方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A−4D】
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【公表番号】特表2008−519847(P2008−519847A)
【公表日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541338(P2007−541338)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/040877
【国際公開番号】WO2006/053186
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(505346702)ザ トラスティーズ オブ コロンビア ユニヴァーシティ イン ザ シティ オブ ニューヨーク (12)
【Fターム(参考)】